現役猟師が抱くジビエブームへの疑問!ジビエは本当に「おいしい」のか?

公開日: : 最終更新日:2016/09/21 ジビエ・ワイルド料理

鹿イラスト

去年の11月に放映されたドラマ「狩猟雪姫」などの影響もあるのか、狩猟というアクティビティがメディアに登場する機会も増え、ちょっとしたブームになりつつあるように思える今日この頃。

僕はあまり知らなかったのですが、加えてジビエというかジビエ食も最近では日の当たるところへ登場しつつあるとか。ちょっとググってみたらけっこう新しい、去年の9月頃以降からの情報が検索にひっかかってきたりします。へー。

てな感じでジビエにまつわる情報をあれこれ見ていたのですが、どうも気になることがありまして。

というのも、たいていの場合、そういう記事では(多少のエクスキューズはあっても)ジビエの味が素晴らしいものであるように描かれているのです。

なぜなんでしょうかね。まぁ、取材に行ってみてマズかったけど「マズかったです!」とも書けないだろうし、取材する側には取材する側の都合もあるんでしょうが。

そんなこんなで、最近「ジビエはうまい、ジビエはおいしい!」という礼賛記事が頻見されるようになってきて、現役ハンターとしては違和感をおぼえることもあります。

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ジビエがそんなにおいしいのなら、なぜ日本の狩猟は衰退した?

そもそも野生鳥獣の肉であるジビエがそんなに万人受けするおいしさを備えたものだったなら、狩猟という行為は今みたいに衰退していないように思うのです。食にかける日本人の情熱はただことではないですから。

ひとくちにジビエといってもいろいろあって、ものによっては調理次第でおいしく食べられます。シシとかカモとかヒヨとか僕も大好きです。

が、そこまでにかかる手間は大きいですし、純粋な味だけでくらべたら市販されている精肉の上を行くものではないとも思っています。( ´・ω・`)

これもハンターになってわかったことの一つですが、普段意識しないけど、実は畜産業ってすごい!

買ってきたものに特別な処理もせずさっと塩こしょうして火を通しただけで当たり障りなく食べられる。超固かったりしない。羽根の一枚、毛の一筋も入っていない。同じ店で肉の部位も同じならほぼ同じ味、個体差がない。

当たり前になっててなかなか気づかないですが、長い時間をかけて現代人の口に合うように家畜を品種改良してきた畜産業者の努力にはすさまじいものがあります。

実際のところ、人間が食べるため人間の好みに合わせて人間が改良・交配して人間が育てて人間が工夫をこらして設計した施設で解体した家畜の肉と、人間に食べられることなんか関係なくただ生きることに特化して進化した野生鳥獣の肉では、食肉としての立ち位置からしてちがうわけです。

そんな畜産業者の努力の集大成とジビエを比べてみたとき、ジビエを美味たらしめている大きな要因のひとつは「自分で獲ってきた、自分で手間をかけた!」という自己満足なんじゃないかと思っています。これがあるからこそジビエはおいしいしハンターをやってもいるのです、少なくとも僕は。(*゚∀゚)

今でこそそれなりに経験があるのでいただき物のジビエもおいしく料理して食べられますが、ジビエを料理したことも食べたことも獲ってきた経験もない人が、一人歩きを始めた感のある

「ジビエはおいしい!」

という言葉の字面だけを盲信して、いただき物のジビエ、たとえば鹿肉を牛肉の代わりに使ってそれ以外をいつもと同じように調理すれば、処理の仕方にもよりますがかなりの確率で微妙な味、食感の料理になるであろうと思われます。

条件つきでおいしいけど、期待しすぎは禁物!

実はこれに近いことを過去の自分が体験しています。「天然の鴨を使ったカモ鍋」にあこがれて猟師になったのですが、初めてしとめたカモを実際に食べてみるとこれが血なまぐさいのなんの! orz

心が折れかけましたが、処理から解体から試行錯誤して、先輩の話を聞いてはまたやり方を変えてみて、あれこれ工夫しているうちにだんだんおいしくなってきました。その過程でジビエの風味そのものに慣れてきたことも大きい要因だと捉えています。

ただ、こうしている今も技術は進歩しています。ジビエはジビエでも市販ものであったり専門料理店のものであれば、流通も処理技術も昔よりレベルが上がって万人受けする味に近づいているのかもしれません。

初めて獲ってきた獲物がマズかった時、そういえばあんな記事があったな、と思い出してもらえると幸いです。 ―by3年前に初めて獲ってきたカルガモの血の味に悶絶した貧乏猟師 orz

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Comment

  1. 大野 智巳 より:

    spinicker様
    初めまして、奈良県猟友会に所属している2年目ハンターです。
    共感するところが多く、興味深く拝見しております。
    当方も薄給取りのくせして、美味しい鴨鍋にあこがれてエアーハンターになったクチです。
    昨シーズン、初めて捕ったアオを放血もせず、自宅で2時間かけて毛むしり、解体して、なんとかして作った鴨鍋の肉のレバー感は忘れません。
    以来、肉を熟成することを覚えましたが、それでも味だけで言うと、店で売ってる肉には及ばないという思いは強いです。
    今年は本ガモを前シーズンより捕ってません。少ない気がしますね。
    ちなみに私もレインストーム使ってます。明日も隣県へ出猟します。
    お互いの安全と猟果を願っております。

    • spinicker より:

      大野 智巳様

      はじめまして! 確かに似たもの同士なところがありますね我々。( ̄∇ ̄*)ゞ
      初のカモは期待しまくってただけに、僕もあの強烈なレバー味にはめまいがしました。今では放血&冷却を徹底するようになってすごくおいしく食べれるようになりました。^^
      僕も今さっき猟から帰ってきました。カル一羽ゲット、しかしキジ一羽を半矢にしてしまいました・・・

      猟期も残り少なくなってきましたが、気を引き締めて過ごしましょう!

  2. 大久保さん より:

    ジョビエブーム、ジビエと大騒ぎしているならば、今後、
    牛口蹄疫流行したらば、全頭殺処分するひつ

    ようないとおもえるが、農水省はどう考えているのであろうか?

    • spinicker より:

      現状ただのブームであって定着まではいっていないし、これから先も動物性たんぱく質の主流な摂取方法として定着するかといえばしないだろうし。家畜の必要性が薄まることはないかと思われるので、口蹄疫への対処・対策の重要性は変わらないでしょうね…。(´・ω・`)

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