狩猟用無線を更新。デジタル簡易無線TPZ-D553MCHのレビューと注意点

公開日: : 最終更新日:2017/12/16 猟具・猟装

TPZ-D553MCH

たいていの猟隊がそうだと思いますが、僕の参加している猟隊でも、猟場での連絡手段は4アマ(4級アマチュア無線)を利用していました。

しかし、アマチュア無線の運用にはいろいろと規制があります。国家試験に合格する必要があるだとか、10分に1度はコールサインを言う必要があるだとか、「業務」での使用は認められないので有害鳥獣駆除時の出猟では使えないだとか。これらを守らないと電波法違反に問われるケースがあったりして、案外煩雑なものなのです、アマチュア無線。

狩猟におけるアマチュア無線の利用について – 総務省(PDF注意)

アマチュア無線はルールを守って正しく使いましょう!(総務省)

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そんなわけで、我らが猟隊では「デジ簡(デジタル簡易無線)」の導入が始まりました。国家試験の受験も運用時のコールサイン送出も必要なく、有害鳥獣駆除などの業務にも使用できる便利な代物。商品に同梱されている登録用紙で申請さえ済ませてしまえばOKという簡便さです。

デジタル簡易無線局登録申請方法

デジタル簡易無線局(CR)登録局のページ

既存のアマチュア無線機との通信ができないのが難点ですが、アマチュア無線にあるような運用の制限がないので、既存のメンバーにも今後入ってくるメンバーにもメリットはあるだろう、と。

僕も一台購入しました。KENWOODのデジタル簡易無線機「TPZ-D553MCH」です!(・∀・)

TPZ-D553MCH 実機レビュー

TPZ-D553MCH

左が今まで使っていた4アマ無線機のアルインコDJ-S57L。今後もどこかの猟隊に助っ人に行ったりすることがあれば出番はあるでしょう。

で、右が新導入のデジタル簡易無線機、ケンウッドのTPZ-D553MCH。ひとまわり小さくなりました。こちらの機種は最大出力5wで、4アマのハンディ無線機と同等です。
末尾がMCHというのとSCHというのがありますが、MCHは付属バッテリーの容量が1800mAh、SCHが1100mAh。MCHの方が長持ちです。

…さて、レビューとは言ったものの、無線に詳しいわけでもなく。「感想」の方が正しいかも。実際に山での狩猟時に運用してみた感想をば。

一般に、351MHz帯を利用するデジタル簡易無線より、144MHz帯を利用できるアマチュア無線の方が、障害物や地形の起伏がある山のような場所でよく電波が飛ぶ。という話を聞いたことがあります。

しかし、実際に巻き狩りで使ってみたところ、当地の山は急峻なところもあるんですけど、デジタル簡易無線でも十分に実用レベルです。5wのハンディアマチュア無線と遜色なく使えています。

耳

ひとつ気になるところがあるのが、音質。KENWOOD製の無線機は音がいいという話を聞いていたのですが、なんかこう、相手の声がくぐもって聞こえることがあったりなかったり。しかもそれが何の加減でそうなるかわからないのです。

ある日はAさんの声が聞こえにくかったかと思えば、次の週はAさんの声は明瞭に届くようになる…かわりに、今度は先週はちゃんと聞こえていたBさんの声がボソボソと聞こえたり。その間、設定を変えたりということもありません。

これはアイコムや八重洲等、他メーカーの無線機を使っているメンバーからも同様の感想があったので、後述しますが、機種の問題というよりは、アマチュア無線より歴史の浅いデジタル簡易無線が製品としてまだ成熟していないということじゃないだろうか。という意見が出ています。

あとは電波の届く距離はどうでしょうか。

これに関しては、山は急峻ではあるものの、距離にすると半径1キロあるなしの我々の猟場では問題なく届いています。

では、広い範囲で猟をしている猟隊ではどうかというと…なんとも言えません。とりあえず上記の条件では使い物になる、とだけ言っておきます。

注意点

おおざっぱ人間の僕などはこういうデジタル機器ってのはどうも苦手でして。しかも先述のように、デジ簡自体がアマチュア無線と比べると歴史も浅く、またあまり日常的に使うような性質のものでもなく(無線愛好家の方は別として)、わかりにくいところが数多く存在する。という印象があります。

ちょっと気になったところをとりあえずあげてみることにします。他にもいっぱいあるんでしょうけどね。(´・ω・`)

高出力タイプ(5w)と低出力タイプ(1w)がある

たとえば、アイコム製のデジ簡無線機でみると、これら。

どちらもいわゆるデジタル簡易無線機ですが、上の製品の方がちょっと安いですね。

だからといって反射的に上の方をポチってしまうと、こちらは最大出力が1w。運用条件次第ではパワー不足かもしれません。

なんでこういうものがあるかというと、5wのものが運用を許可されるのは「全国の陸上及び日本周辺海域」なのに対し、1wのものはそれに加えて「上空」での運用も可能になるのだとか。パラグライダーやスカイダイビングといったレジャーで使えるということですかね。
5w機の種別が「3R」、1w機を「3S」というそうです。

デジ簡種類

http://www.soumu.go.jp/soutsu/kyushu/ru/digital-cr.htmlより

なるほど、はっはっは。わからん。orz

とにかく、上空で使用する予定がないのなら、5w機にしておいた方が無難でしょう。そういう機能があるので5w機を1wで運用することはできますが、その逆、1w機を5wで運用することはできません。

デジ簡でもまったく規格の違うものがある

僕もこの記事を書こうとするまで知らなかったことなんですけど、無線関係に詳しいこちらの「フリラjp」によると、デジ簡には一般的な「AMBE方式」というものと、アルインコ社のみが採用している「RALCWI方式」というものがあるそうです。

デジ簡の通信方式には2種類のデジタル方式が存在しています。
まず一般的なのはAMBE方式、アルインコ以外のデジ簡は、このAMBE方式を採用しており、フリラを運用される方のほとんどがAMBE方式の無線機を使用されています。
そして今回ご紹介しているのが、アルインコの独自デジタル方式の「RALCWI方式」です。
アルインコのみが採用しているデジタル方式のため、他のメーカーのAMBE方式の無線機とは交信できないものです。

http://www.freeradio.jp/?p=1393より

デジ簡のアルインコ方式が密かなブームに?

これも知らずに買ってしまうと、他のメンバーと交信ができないなんて事態になってしまうかも。ややこしいですねぇ。(´・ω・`)
※アルインコ社はAMBE方式のものも発売しているそうです。

ただ、メンバー全員をこのRALCWI方式の無線で統一してしまえば、一般的であるAMBE方式とは互換性がないということで、他の隊と混信するようなことにはならない。というわけなので、使い方次第では便利と言えるかもしれません。

普通のデジタル簡易無線でも30チャンネルあるのでうまく分けられるとは思いますが、まあひとつの可能性ということで。

他にも例を挙げると、特定の機種(TPZ-D503)の特定のロットでは、法的に純正の付属アンテナ以外の使用ができないなどということもあるようで、やはりまだ規格自体が運用面で成熟を迎えていないと言えそう。

TPZ-D503は社外アンテナが「アウト」ってマジか?

いろいろと気をつけることがあったり、すでに4アマ無線機を持っているのであれば金銭面での痛手は否定できません。でも、以前は5万円ぐらいしましたが、今は3万円前後で買えるようになってきました。
運用が簡便なところ、また、今後への投資(有害に参加する時の連絡手段、今後入ってくる新メンバーの手間削減)と考えれば、これはこれでいいものであると思います。

この機会にあなたの猟隊にもデジタル簡易無線、いかがでしょうか!?(・∀・)

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Comment

  1. メカ枝 より:

    おなじKENWOODの機種を持つものとして気づいたこと。本体とスピーカマイクの距離が近いと、発信時にこっちのスピーカにひどいノイズがのりますね、これはスピーカーマイクが高い純正でも安い他社品でもかわりません。

    • spinicker より:

      それは気づきませんでした。純正の高いイヤホンマイクセットが使いづらく、社外品の安いのがいい感じだったのでそれを後日記事にする予定ですが、そこでその情報もさらっとのせておくと親切なのでそうさせていただきたいと思います!m(_ _)m

  2. バラクーダ より:

    初めまして。いつも大変興味深い内容で楽しませていただいております。

    当方は所持許可は持っておるものの狩猟にはまだ足を踏み入れていない者です。無線は好きで特に無資格無線好きです。デジタル簡易無線はスタンダードを使っていますが、電波状況が悪くなるとアマチュアのように粘らず復調しないという部分が使いづらいですね。あとは声の調子が判別しづらいなど。しかし趣味、業務問わず使える物なので、有害活動ではこれしか無いでしょうね。団体で業務無線局を開局すれば話は変わりますが。

    ケンウッド良いですね。私も買い増しはケンウッドにしようかな?などと考えています。お目汚し失礼いたしました。

    • spinicker より:

      はじめまして!(・∀・)

      僕は無線とか電化製品とかはどっちかというと苦手な方ですが、必要に駆られて使っています。( ̄∇ ̄;)
      今のところ、山中ではデジ簡はやや4アマ無線より使いにくいという印象です。飛ぶ距離は思っていた以上、同じ5wの4アマハンディ機と同等かそれ以上に飛んでますが、発音が不明瞭に聞こえることがあるのが現状最大の難点。同じ日に同じ人の言葉がきれいに聞こえたり不明瞭だったりするので、距離なのかな? 話し方とかは同じ人だから変わらないはずなんだけど…

      所持許可はお持ちということなので、現状は標的だけということでしょうか。お気が向いたら狩猟の世界にも足を踏み入れてください!(・∀・)

    • バラクーダ より:

      早速のご返信ありがとうございます。

      現在は標的のみで、スラッグとスキートをやっています。狩猟も興味ありますし、誘われてもいます。これから狩猟免許を取得しようと思っていますが、ただ誤射が怖いですね。「藪が動いた!」で発砲する輩もいますので・・・。

      無線は20代(現50間近)のころから遊んでいますが、無資格無線ばかりでアマは持っていません。狩猟の世界に足を踏み入れると4アマは最低取らないとなぁというのもあって、面倒だなと思うことも(笑)

      こちら(静岡県某市)でも有害活動はデジ簡を使ってるそうです。使いづらい(アマに比べ)から使ってないよ!などとも聞いています。ただ有害は役所関係なので役所から貸し出されてるそうで、使わざるを得ないみたいですね。デジタルなので初期のデジタル携帯電話のように音声がケロケロする時があって聞き辛いこともありますね。呼び出しの15ch以外は交信距離が短い感じがします。アンテナを長くしたり交信距離を伸ばす手立てはありますが(合法の範囲で)、アナログの無線の方がいいですね。デジタルのおかげで電池の持ちは良くなったんですが。鉄砲も面白いですけど無線も面白いですよ。ありがとうございました。

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