師匠と歩く猟場―忍び猟(おもに鹿)のコツを聞いてきた。

公開日: : 最終更新日:2016/10/17 狩猟よもやま話

鹿師匠

たまにサイトアドレス宛てにメールをいただくことがあるのですが、なかには

「教えてくれる人がいない」
「所属の猟友会支部に銃猟の人がいない」

といったものがあり、お住まいの地域などによっては独力での狩猟デビューを強いられる方も少なからずおられるご様子。

今回、師匠の同意を得られたので、そういった方のために、先の土曜日に鹿師匠と山を歩いた時に聞いてきたことを少し紹介しようかと思います。

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line

舞台は奈良県某村。この山深くシカの気配が濃い土地をひたすらてくてく歩いて巻き狩り時の待ち場をまわり、雑談しながら歩きます。

猟場を歩きながら交わすベテラン猟師との雑談は、散弾銃キャリアの浅い僕にとっては金言多数。今回もいろんな話が聞けました。

鹿猟場
シカはちょっとした木立の中にでもいる。人間から見えてなくても。
山歩き中、師匠に「この中にでも何頭かはいると思うよ」と言われた林は、おそらく陸上競技の400mトラックほどのごく限られた面積。しかも周囲をぐるっと道路に囲まれていて、こんな孤立した林にもシカがいるのかと思うようなところでした。

しかし、そこはシカが里から帰る時によく立ち寄る林だそうで、下草のせいで見通しが悪くて見えないけど、十中八九はいるだろうとのこと。勾配が急だったので入りませんでしたが、居そうにないところでも先入観は禁物だそうです。

新しい糞や足跡があるのに姿が見えない場合、それは「近くにいない」のではなく「いるけど見つけられない」だけなのかも。
シカは風景に溶け込むのが得意。植え込みの中でじっと立っていられるとなかなか発見できません。

その特技?をいかして、案外近いところからこちらをじっと見つめていることがあるそうです。でもこちらは見つけられません。
僕も一度、超新しい、湯気の立つようなテラテラに輝く糞を見つけたことがありますが、周囲に姿はありませんでした。あの時も、そう遠くないところからこっちを観察していたのかもしれません。

シカ猟場
朝夕は里に近いところにいて昼間は山の高いところにいるというが、人の気配さえなければ昼間でも里の近くにいる場合も多い
陽が高くなるにつれて人の活動がさかんになってくるから山へ戻っていくわけであって、時計を見て「あ、もう昼前だ。山に戻ろう」と考えているわけじゃない。神経の太いやつなんかは真っ昼間でも里のすぐそばにいる、とのこと。

あと、カモやキジと同じで、雨の日は注意力が散漫になっていて発見しやすいそうです。昼間でも里の近くにいる個体が晴れの日よりは増えるんだとか。雨音で他の音が取りにくくなるからかな。

自分より高いところにいるやつをこちらが先に発見するのはなかなか難しい。自分より低いところにいるのを発見する方が簡単。
思い返してみれば、今まで無警戒に歩いているシカやイノシシを発見したのは、すべて眼下を歩いているやつらでした。反面、高所からは走って逃げるシカの姿や警戒鳴きの声がよく届きます。orz

昼間は太陽で暖められた空気が谷から山へ吹き上げる「谷風」のせいで、低いところにいる生き物の音や匂いなどの気配が高いところへ届きやすい、逆に高いところから低いところへは届きにくい。というのも原因のひとつでしょう。

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シカ猟場
忍び猟で息が切れているようでは歩くペースが速すぎる。抜き足差し足忍び足。大きな音をさせたらしばらくはその場で休憩して山を落ち着かせる。
これは地域によって差が大きそうですね。奈良県某村は山が険しいのでこれが該当しますが、山が低かったり平らだったりすると、多少早足で歩いても息は切れないでしょうが、それで音をさせているようでは意味がない。

音といえば、シカは人間の足音には意外と無頓着なこともあるんだとか。枝を踏む音なんかは人間以外の動物もさせるし、普段から耳にすることがある音だからでしょうか。

反面、自然の中では耳慣れない音、たとえばマジックテープ・ジッパーを開け閉めする音や金属音、コンビニの袋がしゃりしゃりする音、人の声なんかにはとても敏感だそうです。

犬も歩けば棒に当たる、ビギナーも歩けば獲物に当たる。下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。一番はやはり数多く山を歩くこと。
経験の浅いハンターのカモ猟について「ベテランでもない若手猟師が1シーズンで23羽の鴨を獲った方法とは?」で触れていますが、大物の忍び猟でもやはり「1犬2足3鉄砲」が成り立つようです。

「獲れない→つまらない→行かない→行かないから経験値が増えない→獲れない」のネガティブスパイラルから抜け出すためにも、獲れないからこそ多く出猟するべき。ということですね。モチベーションの維持が大事。鉄砲背負っての山歩きそのものを楽しめればベストですね。

シカの糞(L)

他にも、たとえ足跡が残っていなくても、落ちている糞の大きさや毛の太さ来ていたシカのサイズが推定できる。などのことを教わりました。これなんかはかなり大きなシカ。やはり師匠がいるといないとでは大違い。

師匠なしの猟師生活も男前でなかなかシブいものですが、

「師匠が欲しいけど周りにいない・・・(´・ω・`)」

という方は、うちの師匠を「ネット師匠」として吸収できることは吸収してください。

でも、いずれはいい師匠にめぐり会えますように!

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Comment

  1. monndou_n より:

    こんばんは。いつも、ためになる情報をありがとうございます。
    私の田舎では、奈良公園の鹿のように、人の近くまで近づいてきます。(今の所)
    先週、師匠に銃猟について、教えて頂きました。気が付けば、2時間ぐらい経過していました。やはり、犬は、重要と教えて頂きました。来年は、実践で教えて頂けるようです。(軽自動車、無線機は必須らしいです。)
    ただ、私の田舎では、猟をしている人は、いていないようなので、地形から自分で開拓しなければ…。
    今週から、鹿用の箱罠を作るつもりです。
    とりあえず、罠を仕掛けて頑張ってみたいと思います。

    • spinicker より:

      おはようございます。(・∀・)

      シカもシシも、狩猟圧がなかったり、それどころか餌付けなんかしてる地域ではそんなものらしいですね。神戸市も餌付けをする輩がイノシシを誘因していて問題になっています。

      頼りになる師匠がおられるようですね。いろんなことをどんどん吸収していってください! あとは創意工夫です!

  2. ltchughes より:

     師匠、ありがとうございます!

     雨の日は出猟を諦めていましたが、本来は積極的に打って出るための日なのですね。今週末は天気が悪いのですが、これは楽しみです。

     今後も良い教えをよろしくお願いします!

    • spinicker より:

      いや、僕が師匠というわけじゃないっすけどね。この記事だって師匠の受け売りにちょっと解説を加えただけであって。( ̄∇ ̄;)

      雨の日は確かに獲物が発見しやすかったりボーッとしたりしてるので概ね矢を掛けやすいですが、かといって5倍も10倍も獲りやすいわけではないので、僕は大雨だったりすると猟期でも家でゴロゴロしてますよ。

      あと、キジは雨模様の日に開けたところに出てくると言いますが・・・あまり関係ないような? 今までのキジは天気のいい日に獲ったのがほとんどですけどね。(´・з・)

  3. ぴよ より:

    ぴよの周りには空気銃の師匠がいないどころか、狩猟をしている人がおりませぬ。
    ということで、ネットから情報を得つつ、独りであちこち出没してます。

    散弾使いの方でもよいので、猟場での所作等を教えていただけたら、ぴよのスキルもあがるのになぁと思いますが、無いものねだりをしても仕方がないのでネットを師匠と思って頑張ります!!

    • spinicker より:

      やはりそういう地域もあるんですね。

      でも師匠がいないのは不便な反面、一から十まで自分で決められるので、それはそれでおもしろいものですよね。師匠にいろいろと教えてもらえても、やっぱり自分で猟場の新規開拓したくなるのはたぶんそういった理由なんでしょうね。( ̄∇ ̄;)

  4. 藤屋 より:

    師匠は居る無しで差が大きいですね。私は初年度にシシ13頭を獲れたのも全て師匠のおかげです。空気銃も近くに若いけど情報満載のアドバイザーが居ます。只々、感謝!です。シカも昼のおやつタイムから出てくる事も多いらしいですよ。林の切れ目の下草の多い所とか。

    • spinicker より:

      年13頭っすか! 肉の消費がおっつきそうにないですね。( ̄∇ ̄;)

      昼間に油断してると大物が来る、なんてのはどことなく釣りに似てますね。ハンター/釣り人の殺気は獲物に伝わる、なんてことを言うのも共通点。釣りと狩りはやっぱり近しいものがあるようです。

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