鴨臭さの原因、埋没した筆毛を除去する方法
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最終更新日:2016/10/20
狩猟よもやま話

猟期も終盤に入ってくると、『筆毛』の目立つ鴨が多くなってきます。『棒毛』とも言いますね。
筆毛とは要するに羽根の素みたいなもの。これが成長して羽根になります。インコや文鳥なんかを飼っていた経験のある人ならわかるはず。チクチクのアレです。
鴨の筆毛には二種類あって、

こういった細かい、黒い糸くずのような筆毛がまずひとつ。これはおそらくダウン(防寒用の綿みたいな羽根)になる筆毛。
鴨を食用にする上でこっちの筆毛は放置しておいてもそれほど味に害は出ないのですが、

ちょっと放っておけないのがこのごっつい筆毛。これは外側の大きい羽根になる筆毛だと思われます。
この羽根はおもに耐衝撃(鴨が矢強いのはこの頑丈な羽根とぶ厚い脂肪層のためだと考えられます)と防水の役割を受け持つ羽根で、ダウンより頑丈な構造が求められるので、大ぶりにできている上に、筆毛の段階から水をはじくための脂で包まれています。食用にあたってはこの脂がくせ者なのです!
もちろん鴨なので皮下脂肪も鴨の風味があるのですが、筆毛の脂は皮下脂肪の鴨テイストを100倍に濃縮したような感じ! 血の臭いとも違う、いわゆる『鴨臭さ』の原因のひとつです。皮脂腺のところもこんな臭いがしますね。
クセのある脂を含んだこの筆毛。おいしく鴨を食べるために、この筆毛は取れるだけ取ってしまいましょう。
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皮の上に大きく出ているものはピンセットか何かで容易に抜けますが、問題は皮膚の下に埋没している、これから成長して顔を出す段階の筆毛。うすーいストローのような膜に覆われていて、その中には鴨臭い脂が詰まっています。
まず、筆毛の真上をさけて、少し横のあたりを厚みの薄い鋭利な刃物で切開します。真上を切ってしまうと、少し力加減をミスっただけで筆毛ごとまっぷたつになってしまって臭い脂が流出します。(´・ω・`)

少し横に開けた切り込みから埋没筆毛をほじくり出します。この先端の黒っぽいところに多く脂が詰まっています。

お わ か り い た だ け た だ ろ う か 。
取り除いた筆毛を指でぎゅっとつまんだところ。ドロッとした脂がにじみ出ています。こいつが鴨臭い! (x_x)
シーズンの中盤ぐらいまではとぅるっっっとぅるの美肌ガモも少なくないのですが、狩猟をやってるとこういった汚肌ガモにも必ず当たります。
そういった個体のすべての埋没筆毛だけを取り除くのは実質無理なので、あまりにも多い場合はその部位を皮ごと切除することもあります。
僕は鴨皮大好きなので、できるだけ皮を残す努力をするのですが、鴨皮に思い入れがない人であれば皮ごとはいでしまってもいいかと思います。 ・・・もったいないけど。(´・ω・`)
(鴨皮も大量すぎると鴨の臭いが多少気になることはありますが、そういう場合は湯通しで少し脂を落としたりしてます)
ジビエ食材は市販食材のように手軽には料理できませんが、このままならない食材を創意工夫でおいしく仕上げるのもハンターならではの楽しみのひとつ。谷が深ければ山もまた高いのです!
そんなこんなで、冷凍庫にストックしてある鴨を食べながら、次の猟期を心待ちにしている今日この頃です。 ^ ^
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Comment
こんばんは。
こういうことは実践的な内容なので、所持していない者にはわからないことですね、ありがとうございます。
撃ち落としたらなるべく早く腸を抜き、腹を洗って冷やす、これはこちらで学んだものの、羽を抜くことについてはただ抜けばいいという程度の認識でした。
経験者にはごく普通のことでも、目からうろこのことがたくさんあります。
また色々とご紹介ください。
おはようございます。(・∀・)
筆毛の件は1シーズン鴨猟をやればトキハさんも必ず気づいたはずです。僕でもわかったぐらいですから。(^ ^;)
でも、あらかじめ知っていれば最初の一羽から筆毛の洗礼を回避できるので多少はお役に立てたかもしれませんね。よかった。^ ^
私は今シーズンが初デビューですが、「練習」をかねて鹿児島の業者が網で獲ったカモを購入してさばきました。ご指摘の筆毛、苦労しました。
その後、ワックスによる羽むしりを知ったのですが、「筆毛」を取ったワックスは臭くて再利用できないという記述が理解できませんでした。
そういうコトだったのですね。ありがとうございます!
ロウむしりもやってみたのですが、鴨を浸けると「パチパチッ!」と、油で揚げたような音と泡が出たりもするので、なんか羽根むしりなのに火が通ってしまいそうで気になりました。(´・ω・`)
あとは、くり返し何度も使えるのはまちがいないんですが、使うほどに、ロウがあたたまってくると筆毛から出るニオイがかなりのものになりますね、たしかに。どうしたって再利用のロウにも筆毛は入りますし。
僕の場合、一度に獲ってくるのはたいてい1羽か2羽だということもあって、今はもうロウむしりはやってないです。素早くむしれるのはまちがいないので、出猟ごとに定数ぐらい獲ってくる人なら有効だと思います。