無事に終猟するために。狩猟中の滑落死亡事故のブログから学ぶこと
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狩猟ヒヤリハット・事故
一般的に猟期は11月15日~2月15日ということになっていて、昨日で終猟という地域も少なくなかったことでしょう。おつかれさまでした。事故やケガ等はなかったでしょうか?
当地ではシシ・シカが対象の場合のみ、あと1ヶ月、3月15日までの延長戦があります。僕の今期の終猟もそのあたりになりそうです。レインストームはしばしの休息。870にがんばってもらいます。
一足先に終猟された皆さんにあやかって僕も無事に終猟したいと思いますが、過去の狩猟シーンでは、猟期の終猟直前、2月15日に滑落死亡事故が起こったということがあったようです。
その事故の関係者…というより、目の前で猟友を亡くした当事者の方のブログがありまして、それを読んでいると、なんというか、本当に無念さがにじみ出ていて、同じく巻き狩りをする者として身につまされる内容だったので、ここで引用・紹介することにします。
少し長くなりますが、記事の引用を。
実はこれは私の所属する猟隊で起こった出来事です。
しかも十数人の仲間と書いてますがこの事故は私と亡くなった柳さん二人で歩いていた時に起こった出来事でした。柳さんは私が狩猟を始めた時からの大先生でチームのリーダー的存在の勢子長(犬を使って獲物を探しだす役割)、この人と一緒でなければ私が猟をやる意味が無いと思っている程に慕っている存在でした。
また自分も特別にかわいがっていただき、私が狩猟を始めて初めて撃った鹿を追い出してくれて探し出してくれたのも柳さんでした。その時の「良かったな!おめでとう!」とニッコリ笑ってくれた顔を今でも思い出します。その柳さんが私の10m前で崖から転落してしまいました。
新聞の30度というのは身体が止まっていた場所で実際の転落地点はほぼ90度に近いところからの転落でした。すぐ後ろで見ていたのでその瞬間の事は丸一日経った今も頭から離れません。
最後の会話は「金井くーん、コッチ滑るから気をつけろよーー!」でした。
無線で救助を要請しヘリで搬送して貰うまでの間、時間がとても長く感じ、声をかけたり止血したり身体を温めたりする事しか出来ない私達はとても無力で悔しい思いでした。私は一番近くにいた事で警察からの事情聴取を受け、それが終わった後に猟友から病院で死亡したとの連絡があったと聞き、余りの悲しさと悔しさに声をあげて泣きました。
埼玉県の狩猟期間は毎年11月15日から2月15日までです。狩猟を心から愛した柳さんは2月15日に永遠の終猟をしたのでした。
…orz
こんなことが実際に自分の猟隊で、自分の目の前で起こってしまったら…僕ならどうしていいかわかりません。代わりに自分が落ちた方がましな気さえします。
(自分ならなんとなく死ぬところまではいかないような根拠のない自信があるんですけど、これもあまりよくないことですね…)
猟友会は超高齢社会なので、支部の人の葬儀に参列したことは何度かあります。が、このような事故という形でのお別れは僕はまだ体験したことがありません。今後もしたくありません。
しかし、自分の行いを振り返ってみると、ついこないだも
被写界深度の深いこの画像ではわかりにくいですが、左手が落差10m強の崖、その下も岩場になっていて、足を踏み外すとかなりまずいことになる。というきわどい獣道(赤のライン)を、引き返すのが面倒なばっかりに強引に渡ってしまったり。当然猟期中のことなので、銃+装備一切を背負った状態で、です。
この時は右の山側斜面から杉の根が生えていたのでそれをつかめば大丈夫と判断して進みました。けどこれ、足場がソールの幅ぐらいしかないんですけど、ここが崩れでもしたら…やばかった。
杉の根をつかんでいたとしても、荷物いっぱいで宙ぶらりんになってしまえばそこから這い上がることはできなかったはず。いずれ限界が来て手を放す→崖下へ転落の可能性があったわけです。ファイト不発です。(-_-)
去年までは積雪があってもトレッキングシューズだけで単独猟に出ていたのを、最近は軽アイゼンを携帯して出猟するようにしているのは、実はこの記事を読んでから。雪だけでなくぬかるみでも有効な装備を2000円前後で調えられるのなら高くはありません。
物心両面での備えができれば、事故はおのずから遠ざかっていくもの。
あとは僕の場合は「自分はなんとなく死なない」と思っている、この根拠のない自信をどうにかすることが肝要な気がします…。
まぁ、人より頑丈にできているのは過去の色々なケガで証明されてるんですけど、猟で入っている山には、そんな自信など何の意味もないような断崖とかもあります。難しいかもしれないけど、この意味のないふわっとした自信はなくしていかないと。。。
件の事故はもう三年も前の話だし柳さんと面識はないけど、同じくグループ猟をする者として、他人事とは思えません。
僕などがここで冥福を祈っても関係者の方の誰にも届かないでしょうが、せめて教訓として受け止めて、これからのハンター生活を可能な限り安全に過ごしたいと思います。m(_ _)m
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『自分だけは・・』
僕もそう思っていた時期がありました。
何度転んでも怪我しないし、他でも間一髪で助かってきましたから。
でも、ある日突然スキーで転倒して動けなくなり、救急車で運ばれました。
検査の結果、今まで思っていたように、僕の身体はやはり頑丈だったようで、担当した医師からは『常人の5倍は硬い丈夫な骨だよ』と言われました。
でも、スネの骨は捻れて砕けていました。
『自分だけは・・』
後々振り返ってみると、そう思っていたからこその怪我だと気付きました。今までは単に運が良かったんでしょう。
四つ足を追いかけるのは楽しいです。
でも、僕らって普通の人よりもはるかに死のリスクが高いことをしているんですよね。
人は1人で生きてるわけじゃありません。
僕らが死傷して、悲しむのは周りの人です。
そこを常に考えて、山に入りたいものですね。
>>『自分だけは・・』
後々振り返ってみると、そう思っていたからこその怪我
わかる気がします。健康に自信のある人はなかなか病院へ行かないから大病を発見しにくい、というのと似てる気が。今まで何もなかったからこれからも何もない、とは限らないわけで。
実際、20代より30代の頃の方が、30代の頃より40代にさしかかった今の方がやはり体の強度は失われているような気がします。認めたくないけど「徐々に老いている」ということも忘れないようにします。(´・ω・`)
身体が丈夫な人と、身体が柔らかい人というのは案外そういった思いを持ちやすいですね。
たまに身体が丈夫で柔らかい人という凄い人もいまして、それは良い事なんだけれど、私は怪我をしない!死なない!と思ってらっしゃいます。
あと、若かりし頃、相当スポーツをこなされて、身体に自信のある方もそう思ってらっしゃいます。
自分だけは大丈夫⁉️
いえいえそんな事はありません。
病気に対して、車の運転、アウトドアな趣味、仕事、全てに潜んでいます。
自信過剰、自意識過剰、これは危険です。
特に鉄砲を持ち、山と獣を相手にする猟師さんは持つべきでは無い意識ですね。
僕の場合、高校時代に顔面にバットが直撃するという事故で入院した時に、担当のお医者さんから「キミよくこれで死なんかったな」みたいなことを言われたこととか、ケガの治りも早かったこととかからそういった意味のない自信が湧いて出たのかもしれません。
でも40代にさしかかって、ちょっとずつ衰えてきてるのを自覚しています。昔は頑丈だったけどそれは失われつつある、というのを肝に銘じて山に入りたいと思います。(´・ω・`)
心臓振盪がメディアで周知されていた10年ほど前、それでも何の備えもせずに事故を起こす少年野球団が複数ありました。曰く、「自分たちのチームは、大丈夫だと思っていた」。
何の根拠も無い「自分は大丈夫」は、大敵ですね。去年も一昨年も通勤中に凍結路面で転びました。アイゼン、欲しいです。。。
たぶんそういった「自分は大丈夫」の考えがいろんな事故を引き起こしているんでしょうね。若いうちはまだしも、いろいろ衰えてくる年齢に差しかかると大丈夫ではなくなってきて…。
先週末の出猟時、凍結した坂道を下ることがありました。大げさかなとも思ったけど、いやいやこういうところだ! と考え直してチェーンを装着して安全に下りてきました。これを続けます!( `・ω・´)ゞ
購入された軽アイゼンは一度山で試された方が良いです。
物によっては肝心な時に使えない可能性があります。
あと登山用のヘルメットと急傾斜を下る時用に登山用のロープ数本、下り用の杖を作る為の折り畳みののこぎり、ファーストエイドセットを用意される事をオススメします。
ありがとうございます。一度はいてみましたが、いい感じでした。(・∀・)
ヘルメット以外は持ってまして、折りたたみヘルメットと、あとは登山用の伸縮式ストックを一本ザックに入れておこうかなと考えているところです!