恵庭市盤尻の誤射事故が不可解な点だらけなのでまとめてみる
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最終更新日:2019/08/31
狩猟ヒヤリハット・事故
今年も猟銃の死亡事故が起こってしまいました。
タオルをシカの尻と? 恵庭市ハンター誤射死亡事故 十分な確認をしない重大な過失… 北海道(リンク切れ)
こういう事故自体はもちろんあってはならんことだけど実際毎年のようにあるので都度取り上げはしませんでしたが、今回のケースについてはハンターが集うTwitter上でも
「ありえない」
「なんでそうなる」
といった意見があちこちから出て紛糾しています。僕も似たような感想です。
それというのも、今回の事故、発生時の状況を知れば知るほどなんか妙な感覚が拭えないんですよね…
いわゆるガサドンではない
猟銃関連の他損事故双璧のひとつ、ガサドン。
近くの茂みが「ガサ」ッと鳴ったところへ確認なしに反射で「ドン」と撃ち込むのでガサドンという名がついた、というのが命名の通説となっています。
ノールックで撃ち込む背景の一番は恐怖であるようです。クマやシシにひどいケガを負わされた話はハンターなら誰もが一度や二度は聞いています。
そこへ不意に至近距離の藪が意味ありげにガサッと鳴ったら、空想とケガの話が結びついて、ついつい引き金を引いてしまう。恐怖由来のガサドン。二番目は獲りたい獲りたいという猟欲でしょうか。
しかし今回はガサドンではありません。距離も130mほどあったということです。
車両の乗り入れが可能な林道上から発砲したということで「公道上からの発砲」とみなされ違法ではありますが、この点は今回の事故の不可解さと直接の関係はありません。
暴発でもない
双璧のもうひとつは暴発。
2016年岩手県で発生した暴発事故は、脱砲せず軽トラの荷台に置いたライフルが暴発、ボディの鉄板を貫通して助手席の同乗者に後ろから命中、死に至らしめた。というものでした。
当然、暴発は今回の事故の原因でもありません。
第一、ガサドンや暴発であれば、起こってはいけない事故ですが、発生のメカニズムとしてはハンターならよく分かるものなのです。
被害者はオレンジを着ていた
誤射事故で「獲物との誤認」が原因のケースはままあります。しかしその場合は色合いが地味な服装の人が被害に遭っているケースがほとんど。
対して、今回の場合、被害者はヘルメットとベストはオレンジ色の物を着用していました。そしてヘルメットの後ろから白いタオルを汗拭き用に垂らしていたとのこと。
ガサドンであれば姿を見ずに引くのでまだわかるんですよ。見てなければ色は何色でも関係ない。でも先述のようにガサドンではありません。
スコープを載せていた
極めつけはここです。
白いものとは後頭部のタオルのことだろうけど、スコープを載せてるなら白いもの以前にオレンジが目に入ってるだろうと。タオルの上も下も右も左もオレンジ色が見えていたはず。見えてないとおかしい。
どこかが木の枝や葉っぱで隠れたとしても、どこかは視界に入ってたはずなのです。
銃猟ハンターなら銃猟中にオレンジが目に入れば我に返ります。
そして130mというとサボット弾でも結構な遠射です。この距離ならしっかり像を見据えないと当たらないだろうし、しっかり見据えたなら気付くだろうと。どうもスッキリしません。(´・ω・`)
あまりのスッキリしなさに、加害者はひょっとしたら見え方がちょっと特殊だったのかなという気もしました。赤~オレンジ系の色が緑っぽく見えるタイプの色盲もあるようですし…。
加害者の狩猟歴が報道にょって4年だったり6年だったりと今でも一部情報が錯綜している状態ですが、経緯が銃猟をする者にとっては非常に気になることでもあり、続報が待たれます。
「自分には絶対に起こりえない」などとは考えず、誰にでもありうることだと頭に入れてフィールドに出るべきですね。
続報があれば内容を追加・差し替えて更新する予定です。
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Comment
こんにちは。今日やっと狩猟者登録を済ませてきました。新米どころかハンター見習いの私です。
毎年事故の話は聞きますが、昨日このニュースを聞いたときには衝撃が走りました。
同じように疑問も持ちました。
仰るように赤色盲だと皆同じように見えますね。
明暗の差だけのように感じました。
事故をしないようにするのは当たり前ですが、
オレンジでもこのように誤射されてしまうこともあると思うと、怖いです。
ハンターじゃない方々も、山に入る時はオレンジ着て欲しい。
ワー○マンでハンターオレンジみたいな帽子やジャケット売ってますから。
自分含め皆さん、無事故無違反に努めましょう。
おめでとうございます。いよいよスタートですね。(・∀・)
>ハンターじゃない方々も、山に入る時はオレンジ着て欲しい
そうなってくれるとありがたいんだけど、ファッション性を求める人ももちろんあって、そんなダサイのイヤ! ってことにもつながります。かといって強制するわけにもいきませんし…
林業や山菜採りの人がオレンジ着てくれてるのを見るととてもありがたい気持ちになります。
それだけに、オレンジを着た状態で事故が起こったのは残念で仕方ありません。全容の解明を望みます。
師匠とこの件について話をしましたが、銃はライフルでは無くて、スラッグの様です。
スコープでのぞいて撃つのに何を間違うのか不思議で仕方ありません。
本当に不思議な事件だと思います。
ハーフライフルでしたね。
しかしそれにしても、スコープでよく狙ってオレンジ着用の人を撃つって状況が不可解すぎますね。わざとじゃないかっていう人までいました。
何があったのか徹底的に究明して欲しいです。
今期から一種銃猟スタート(^^)v
まずはカルガモくんをゲットしました♪
と喜んでいるところで今回の事故…
林道上発砲とかいろいろ言われていますが、130mをスラッグで撃つのに狙いこまないなんて有り得ないですし、ましていくらスラッグでも藪を突っ切れば弾も反れます…
スコープを使った狙撃経験あれば無理して発砲まで至らない状況だと思うのですが。
引き金引いた経緯は本人にしか分からないですが、本当に「魔が差した」ということなのかもしれませんね。
タオルが動いたのならオレンジも視界に入ってたはずなのに…
おおっ。おめでとうございます! カモは肉もいいけどガラから出るダシが最高ですよ!(・∀・)
普通に考えれば引くはずのない状況なんですけど、過去に事故を起こした人の言に「ああ、あかん、あかんと思いつつも引いてしまった」というのがあって、頭ではわかっていても人差し指が別の生き物になってしまうケースも条件が揃えば起きてしまうようです。
猟欲が強すぎるのも考えものです。「ハートは熱く、頭はクールに」という言葉がありますが、狩猟時もそうありたいものですね。
誰がどう考えても100%あり得ないという事故。それが発生してしまうのが現実でして。
私の職場でも、あり得ない事故が発生して大変な状態になっています。
私自身、見えるはずの無いものが見えたために事故寸前に陥ったことがあります。その直後、見直したら、正常な認識が出来て。後から考えても、なぜそんなモノが見えたと認識したのか、説明が付きませんでした。
そんな経験から、今回の事故も、説明出来ない何かがあったのかなぁと。あるいは同じ方向に本当にシカがいて、弾がそれたら人に当たってしまったとか。
とにかく、安全第一で行きましょう!
事故というものが常に起こりそうな時に起こりそうな状況で起こるものであれば誰も起こさないでしょうしね。起こりそうにない状況でも起こるものだから根絶できないんだろうし。やはり先人の言う「逃がしてもいいや」ぐらいに構えているのがいいのでしょう。
過去に所属していた猟隊では「今週撃ち損じたら、来週来た時には7日分育っとるから得や」って言ってるベテランがいて、あの余裕は見習いたいものだなと思いました。(・∀・)
「今週撃ち損じたら、来週来た時には7日分育っとるから得や」
この感覚、いいですね(^^)v
別に山は逃げないし海も逃げないからと言われたことあります…
猟場間の移動で車ブッ飛ばしてる恐らく猟師なアンテナ付き軽を見かけますが、おいおい事故ったらもともこもないよ~と思いますね(^_^;)
僕は鴨は隔週行けたらいいな、大物は期間中に鹿とシシ2つづつくらいあれば良いかな?
という感じで出猟しますね(゜-゜)
度々失礼します。
>>りゅーじさん
おめでとうございます。私も早くそういう報告がしたい!
と焦って猟欲が強くなると事故の元。
「今週撃ち損じたら、来週来た時には7日分育っとるから得や」
この余裕、いいですね。これくらい心が落ち着いてるといいですね。
私も事故起こさないように冷静にやらないと、と改めて思いました。
愛媛県では11月15日に物損事故がありました。
4人が川でカモ猟中に約40m離れた普通トラックの運転席窓から助手席窓を散弾が貫通したそうです。
運転手が車に戻ったら窓が割れていて110番通報したそうですがハンター4人がトラックに気が付いてなかったそうです。
通報があるまで誰もトラックを撃った事に気が付かないなんて運転手が乗車していたら人身事故だったのに。
最近の軽トラなら色んな色がありグリーン系もあるので保護色だったかもしれませんが普通車のトラックはおよそ白一色なのでは?と思いました。
記事には色が書いていないので分かりません。
これもトラックが藪や葦の中にあったとしても40mの距離で4人共トラックを認識していないなんてあり得るのかな?と思いました。
森林官のご冥福をお祈りいたします。
おお。その件についてはまったく知りませんでした。やはり取り消しになったんでしょうかね。
気がつかなかったんじゃなくて、気がついていても「まさか当たってないだろう」みたいに思っていたのかもしれませんね。あるいは知らぬ存ぜぬで通そうとしてたとか…。(´・ω・`)
僕も先日、出猟中にすぐ近くでバンバン鳴らしまくってるハンターがいてちょっと肝が冷えました。撃たれるのもこわいですが撃ってしまうのも他人事じゃないので、今一度確認を徹底する所存です。