銃猟ハンターと色覚異常。恵庭市誤射事故の背景と得るべき教訓

公開日: : 狩猟ヒヤリハット・事故

※今回の内容は、誰を擁護するものでも、逆に非難するものでも、そして何かを強制するものでもありません。今後同様の事故が起こらないよう注意点と方策を考えていくためのものです。

8月の末にブログ宛てに一通のメールが届きました。昨年の11月に発生した、北海道恵庭市での死亡誤射事故について書いた拙ブログの記事を読んでくださった方からです。

関連記事:恵庭市盤尻の誤射事故が不可解な点だらけなのでまとめてみる

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昨年11月の恵庭市で発生した死亡誤射事故は加害者の色覚異常が事故の一因となっているという内容でした。これであの事故の不可解だった点が氷解しました。

情報提供者にメールだけではなく勤務先の事務所にも電話で直接コンタクトを取って話をうかがい、またこちらで調べた点と複数の合致もみたので、事実であると判断、公開を決断しました。

色覚異常とハンター

まず大前提として、

どのような色の服を着て山へ入るのも当人の自由である。色覚異常があろうとなかろうと、誤射はあってはならない。

という点があります。

その上で、現状、狩猟免許の取得には色覚テストが行われていないのは憂慮される点であると考えます。日本人男性でいうと全体の5%には何らかの色覚異常があり、本人がそのことに気づいていないケースも多いと言われているからです。

わかりやすくいえば、学校の1クラスが30人だとすれば、その中に1人か2人は色合いの違った世界を見ている人物がいる。ということになります。あなたの知り合い、同僚や友人にも1人はそういった見え方の人がおられる可能性の方が高いんじゃないかと思われます。

http://karapaia.com/archives/52232964.htmlより

どうやら加害者には、被害者の着用していたモンベルの赤いジャケットが灰色に見えていたとのこと。このことから、おそらく「1型2色覚(赤色盲)」である可能性が高いと考えられます(このあたりのタイプはまだ聞けていませんが)。

道路を走っている年代物の赤い車で一度や二度は誰でも見たことはあるでしょうが、は色褪せるとピンクっぽく見えることが珍しくありません。そして1型2色覚では、ピンクや赤系の色彩はあたかも灰色であるかのように振る舞うことがあるのです。

シカやシシ=茶色というイメージが狩猟をしない人にはあるかもしれませんが、個体差もあって一概には言えないものです。

こちらは僕が去年しとめたシカ。の一部。茶色とも灰色とも、それらが混じったとも言えるような色合いですね。別にこれで珍しくもないです。個体差はあります。もっと茶色っぽいのもいれば、これよりグレーがかった毛色もあり、角度によっても変わったりします。さらに言えば、僕とあなたで同じに見えているとも限りません。

今ご覧のモニターと目との距離はおそらく1mもないでしょうが、それでもこんな感じなので、130m先で白い物とともにグレーがかった何かがチラチラ見え隠れしつつ移動していた。というのが加害者からの光景だったのでしょう。そして色だけを見て、全体を、全容を確認せずに引いてしまった。

赤系より黄色・オレンジの方が安全性が高い

色覚異常といってもいくつかタイプがあります。

色弱と言ってもいろいろな見え方がある。タイプ別にみる物の見え方(カラパイア)

しかも軽重も一律ではなく、同じ型であっても程度の違いはあるみたいで、実はこれを書いている途中に思い出したんですけど、高校時代に「信号の見え方がおかしい」という同級生がいました。

彼は「ずーっと見続けてると普通だけど、他のところから信号に目を移した瞬間とか、あと眠い時とかにも一瞬変な色に見えることがある」というようなことを言ってたはず。もうかなり昔のことなのであいまいですが。もし彼もそうだとしたら、そんな見え方をする人もあるのでしょう。

しかし数万人に一人という3型2色覚、さらに少ないいわゆるモノクロームの1色覚を除外した、比較的多い1型2色覚、2型3色覚の場合、どちらであっても鮮やかな黄色は鮮やかな黄色として認識されるようです。山の中にはまずない、獲物の体色からはほど遠い色合いです。

これらのことから、山へ入る場合は目立つ色彩、それも赤系よりブレイズオレンジ+黄色の方が強い。そう考えると猟友会のベストはちゃんと考えられてるんだなあと思います(材質はともかく、色に関しては)。

だからといって、たとえば登山や山菜取りの人に強制なんかもちろんできないんですけどね。

それより何より、まず自分の世界がどうなのかを確認するのが先です。

色覚異常かどうかはこちらのサイトでチェックできます。黄色の「START THE TEST」のボタンで開始しましょう。

図の中に見える数字をクリックします。数字が判別できない場合は「Unsure」を、何も見えない時は「Nothing」を。早ければ20問ほどで終わりますが、間違ったりUnsureやNothingを押す回数が増えると設問は追加されます。

結果がNORMALだと通常、PROTANだと1型2色覚、DUETANだと2型3色覚、TRITANは後天的に見られる、非常に珍しい3型2色覚。程度によってSTRONGとかMILDとかも判定されます。

あれこれ言いましたが、敵を知り己を知れば百戦危うからず。自分の目の状態を把握した上で、全体を視認、確認してから撃つようにすることで対処できるというのが僕の認識です。

恵庭市の事故は確認不十分のまま、対象の一部しか見えていない状態で思い込みをもとに引き金を引いたために起こってしまいました。色はあくまで補助材料。形、動きなどを含めた総合的な判断が必要です。山へはシカみたいな色合いの服を着ている人だって来るわけですから。

判断が遅れたために引けなかったら? それでいいのです。また次来た時にしっかり判断した上で撃てればいいのですから。安全は猟果に勝ります。というか比較対象ですらありません。僕がかつていた猟隊では「今週逃がしても来週獲れたら一週間ぶん育っとるからちょっと得や!」と言い合っていました。

先ほど話した信号でたとえると、相手がシシでもシカでもカモでも何でも、銃猟に青信号なんかない。常に赤の点滅信号です。

赤の点滅信号は「停止位置で一時停止をし、安全を確認した後に進むことができる」だけど、銃猟では進むが撃つに変わるだけ。心の停止位置でしっかり止まってから、安全確認ができた時だけ撃つことができる。

それを徹底することが誤射を出さない最短のルートで、我々の責務で、事故から学ぶべきことであると考えています。

※今回の内容は、誰を擁護するものでも、逆に非難するものでも、そして何かを強制するものでもありません。今後同様の事故が起こらないよう注意点と方策を考えていくためのものです。

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Comment

  1. バラクーダ より:

    安全第一は最重要ですよね。分かっていても猟果を焦るばかりに・・・なんてならないように気をつけたいものです。
    以前にも「一週間分育ってるから・・・」というお話はありましたよね。それでいいと思います。
    私の所属する猟隊も、外しても獲れなくても文句を言う人はいませんね。

    先日今シーズンの狩猟者研修会に参加してきましたが、やはり事故に関しての注意喚起が多かったですね。
    先シーズンも猟期終盤間近で緊急研修会がありましたが、やはり事故の多さで催されたようでした。
    移動中の脱包は当たり前で良いのですが、誤射は誰にでも起こりえる可能性が高い事だと考えてます。
    この猟期も安全第一を徹底して、万が一にも事故を起こさないよう気をつけたいと思います。
    皆さんも気をつけて狩猟を楽しみましょう。

    色覚テストは「Normal」と出ました。大丈夫なようです。ご紹介ありがとうございました。

    • spinicker より:

      色覚異常であってもよく確認すれば安全だし、なくても確認が不十分であれば危ないことになります。だからこそ欠格事項にはなってないんだと思います。

      >先シーズンも猟期終盤間近で緊急研修会がありましたが

      猟期中にやるというのは異例ですね。僕は今のところ獲物の視認についてヒヤッとしたことはないんですが、だから大丈夫、ではなく「今のところない」だけであってこれからもないとは限らない、と考えるようにしています。

  2. さばかん より:

    興味深く読みました。事故を起こした年代ではまだ小学校の時に色覚異常を検査するテスト・・・当時は色盲検査と言っていたような・・・が全員参加でありましたから、海外にいたとか検査日に休んだとか不登校でなければ検査は受けているはずです。

    ただ、色覚検査は不要という論が出て、15~16年前から希望者のみになっているようです。

    しかし、今回の事故の原因の1つとなっている以上、今後は狩猟免許の試験で色覚検査もやった方がいいのかなと思いました。知人にも色覚検査で緑と赤だったかの区別がつきにくいという人がいますが、産まれた時からその状態が当たり前なので検査をしないと気づかないようですし。

    獲物は色だけで判断するものではないですが、狩猟鳥獣の特に鳥類の識別にやはり色も重要な要素です。

    ただ、これだけで試験で落とすということではなく、色覚異常を免許に記載して本人に自覚させ、更新の時などに特に注意を促す感じでもいいのかなとは思います。

    ハンターとしては色覚の問題は良い悪いとかはなく、自覚しておいて気を付けることは大事だと感じました。

    • spinicker より:

      銃猟ハンターなら「色より動き」だと感覚的にわかるけど、そうでない人にはどこまでわかってもらえるか…。対外的にわかってもらいやすい対策として、もちろん結果がどうだったからといって免許の取得や更新不可なんてことはなしで「銃猟免許取得/更新時の色覚異常検査と結果の通知」は、ハンターのためというよりは対外的に「銃を持つ以上無策ではありませんよ」というアピールとしてやっておいた方がいいとも思うのです。それでなくても銃とかハンターへの視線が厳しいお国柄ですし。

  3. 野良ハンター より:

    石原式色覚検査ですね。
    旧ドイツ軍では、偽装と自然の緑を見分けられると一部の色覚異常を偵察員に採用していたとか。

    狩猟に限らず、色覚異常は危険な場合もあるので、検査は受けた方が良いですね。

    • spinicker より:

      >偽装と自然の緑を見分けられる

      新種の動植物などの発見でも優れた成果が上がっていると聞いたことがあります。ちょっとした差に気づけるそうですね。色覚を補助できる眼鏡もあるそうですし、異常とか障害とかいうのはちょっと違うような気もします。知っておくことは大事だとは考えますが…

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