狩猟ヒヤリハット体験その6 ハンターと餌付け民
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狩猟ヒヤリハット・事故
以前にも言った記憶がありますが、たいていの場合、ハンターというものは動物が好きな人種です。動物に対する興味が高じた結果狩猟への道を歩んだ、とも言えるかもしれません。
捕獲される動物からすればなんとも迷惑な話なんでしょうけど、一方で、ハンターとはまた違った方法で動物への興味を表現する人もいます。「餌付け」です。
都市部では猫や鳩に対する餌やりが問題になっていることもあります。餌をやるのが生き甲斐で、周囲の迷惑やなんかは我関せず。という人たちです。(´・ω・`)
では、猟場でハンターがそんな人たちに出会ったらどういうことになるでしょうか?
鴨が寄ってくる!
奈良県にある「A水路」はカルガモがよくつく優秀な水場。今までに何羽か捕獲しているいい猟場です。いや、いい猟場でした。
今年の猟期前、軽く猟場の見回りに出て、そのA水路にさしかかった時のこと。
やはりいました。数羽のカルが群れて泳いでいます。
こちらはまったく忍んでいないので15mほどの至近距離で気づかれました。ははっ。これはすぐ飛ばれそうだな。
…が、どうも様子が変です。
カルたちは「!」という様子を見せた直後、こっちめがけて泳いでくるではありませんか!
カルたちはすぐ足元まできて、こちらをチラチラとうかがいながらくるくる泳ぎ回っています。これは一体…。
不思議に思っていると、水面がおもむろに波打ち、カルたちがいっせいに騒ぎだしました。
顔を上げると、先ほど車で追い越したおじいさんが、手に持っていたコンビニ袋からパンくずのようなものをばら撒いていたのでした。
なんとなく立ち去るタイミングを逸してしまったのでしばらく様子を見ていると、おじいさんは一言の言葉を発することもなく数分ですべての餌を撒きつくし、最後にこちらをジロッと一瞥して来た道を戻っていきました。
この見るからに頑固一徹そうな餌付けじいさん。ここのカルガモを自分のペットのように思ってるんでしょうね。カルの方もここにいれば人間が餌をくれるのを知ってるので、僕の姿を見ても逃げなかったのでしょう。
餌付けじいさんがいつから餌付けをしているのか、来る時間が決まっているのかいないのかは知りません。しかし実際、僕は以前に何度か、このすぐ近くでカルをしとめています。
今まではしとめてから回収までの間に誰も来ませんでしたが、この人と出くわさなかったのは運がよかっただけなのかも。
ペットのように思っている鴨に銃を向けられているところを、いやそれどころか、頭から血を流してぐったりしているところを発見して、そのかたわらにタモ網で回収しようとしている猟師がいたりなんかした日にゃ…。超特大のトラブル必至です。
それ以降、この猟場は放棄、巡回の対象外となりました。こういったことがあるので、やはり見回り(と、運)は大切ですね。
いつもと違う様子、今回であれば「逃げるべき鴨が寄ってくる」点に気づいて様子を見たことで、接近するべきでない猟場をふるいにかけることができました。
法的な問題はなくても、同時に人的な問題もクリアしておかないと円滑な狩猟は難しいもの。できうる限り見回りや下見を行って、この手のトラブルを避けられる可能性を高めておきましょう。
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Comment
いつも体験談読ませてもらってます。
新米猟師の私にとって貴重なお話しでした。
せっかくの良い猟場が使えなくて残念ですね。
こういった人と遭遇したら、こちらに非がなくても通報とかされそうですし、揚げ足とられないように諦めるしかないんですかね。
私はまだ猟場自体を探すことに苦労してますが、
周囲の状況含めて用心しておきます。
ほんとありがとうございます。
非があって通報されたら仕方ないとして、非がないのに通報されるのはつらいものです。でもハンターじゃない人はそのへんの細かい法律なんか意識することないだろうから、やむを得ない面もあるんですけどね。(´・ω・`)
鴨はまだ在庫があるので今のところ大丈夫です! 今のところですが。
自ら餌付けしてズドン!
新しい猟法?いや、罠も餌付けしてるしw
箱罠も言ってみれば餌付け猟法ですね。なので場所によっては、というか農家さんによっては箱罠は置くのやめてくれ、というところもあるそうです。さもありなん。(´・ω・`)
いやぁ、私だったら、やっちゃいますね。間違いなく。15メートルって、確実に回収出来ますね!
おじいさん、ありがとう!!おかげでおいしい焼き鳥にありつけました!!
撃ちゃ外さないだろうし回収もすぐだけど、じいさんの件を抜きにしても、こちらを見つけて近づいてくるような人に慣れてるのはやっぱり撃ちにくいですよ。それまでは姿隠して接近してたから近寄ってくる、ということはなかったですけど。orz
この餌やりおじいさんの目的は何でしょうか?
バードウォッチか写真撮影か自然保護かはわかりませんが、所詮その人の自己満足でしょう。
野生動物への餌やりは、生態系を崩し人間と野生動物との関係をも崩す結果しかもたらしません。これは違法行為とまでは言えませんが、非常識な行為であり立派なマナー違反です。本人達は良いことをしていると思っていますから、ハンターこそこういう人達と戦わなければならないのではないでしょうか。
おそらく好きでやってるんでしょうけど、そうでなくばいいことをしてるつもりか、もしくは何も考えてないかのどれかでしょうね。
けど、やってることはともかく、動物が好きだというのはわからなくもないので、正面から四角四面に理屈を言うのもなかなかやりにくい…。こういう人は説得に耳を貸そうともしないだろうし。どうしましょうかね。(´・ω・`)
こんにちは
ふらふらしていたら、楽しいサイトに楽しいサイトにたどり着きました。
写真を拝見していると、見覚えのある池がちらほら。5年ぐらい前には、私もよく回ったエリアです。装薬銃だとちょっと微妙なところが多いので、最近はご無沙汰でしたが、今シーズンは久しぶりに行こうかと思っていました。猟場であったらよろしくお願いします。(エアの人見たら、声かけますね)
ところで、この水路、かなり気になります。餌遣りの人が居るかどうかは、わからないことの方が多いです。ちょっと背中が寒い感じです。差し支えなければ、場所を教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。
はじめまして!(・∀・)
まぁ、猟場となりうる場所はいくつかあっても「好猟場」となると限られてくるので、だいたい同じような池にハンターが集まることになりますよね。
装薬での鳥撃ちはなかなか場所的に難しそう。僕は装薬銃は山の中でしか鳴らせません…(´・ω・`)
申し訳ありませんが、具体的な場所はお教えしかねます。
ただ、問題の場所は数軒とはいえ民家が点在していて、装薬ではまず撃つ気にならない場所のはず。skkhさんは大丈夫かと。
早速にありがとうございます。
自分で言うのも何ですが、結構撃つ場所は気にする方なので、撃ってから、後ろ(もちろん、自分の後ろ、銃口と反対側)に人が居るのに気がついて、申し訳なくなったり、今回の記事を読むとぞっとしたりします。
家がある所ということさえわかれば、ある意味、安心です。
これからもこちらは覗きます。楽しい記事を期待しています。
空気銃は装薬銃にくらべるととても静かだけど、それでも僕は里山ではおいそれと撃てません。散歩の人とかも少なくないですし…。「今から撃つ!」というところを獲物にみつかるのはいいけど、人に見つかるのは絶対避けたいですね。感情だけでもの言ってくる人だっていっぱいいます。(´・ω・`)
狩猟ブログも増えてきましたが、またお時間のある時においでください!(・∀・)