たとえばこんな休日を。もし、あなたがハンターになったら(装薬銃編)
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最終更新日:2017/11/28
狩猟よもやま話
5:09 起床
あなたは目を覚ました。アラームが鳴る6分前。それだけ今日の巻き狩りが楽しみだったということだろう。
まだ薄暗い窓の外をのぞくと、小雪がちらついているのがわかる。猟はやはり寒い方が気分が乗る。
腹ごしらえを済ませ、ガンロッカーから愛銃を取りだし、準備が万端であることを確認すると、あなたは本日の集合場所へと向かった。車で1時間半ほどの道のり。雪化粧と今日の猟への期待を楽しみながらのドライブになりそうだ。
8:10 巻き狩り(第一ラウンド)開始
集合場所でいつものメンバーと顔を合わせ狩猟談義と雑談に花を咲かせる。ほどなくして足見(獲物の足跡を見て居場所の見当を付けること)から帰ってきた猟隊の隊長が合流、今日の見通しと隊員の待ち位置を伝える。
シカがどこにでもいるのはいつものことだが、シシはこの寒さで陽当たりのいい南向きの尾根周辺に移動したようだ、とのこと。
新人のあなたは期待値の高い小尾根の上に配置された。この尾根から見下ろせるところにはシシもシカもよく使っている獣道が走っている。銃を構えて獣道を眺めていると、犬を放したという連絡が無線に入ってきた。さあスタートだ!
9:00 待機中
山の中は冷える。寒さに負けないよう、あなたは持参のホットポカリで英気を養う。コーヒーはカフェインの利尿作用が強いのでトイレが近くなりがちだ。避けた方がいいだろう。
尾根下の先ほどとは反対側、こちらはシシはあまり通らないが、シカの道は数多いとのこと。
その場で待機を続けるも、無線でのやりとりはあまり活発ではなく、犬がこちらへ来る気配もない。こういう局面でも通りすがりのシシやシカなどがひょこっと姿を見せることがあるので、気を抜いていると虚を突かれることがあるが、この時は何も現れず、そのまま撤収。午前中の第一ラウンドは空振りに終わった。
12:30 第二ラウンド開始
午後からの第二ラウンドでは山を変えてみる。あなたはまた期待値の高い待ち場につけてもらえた。
今度は犬を放してすぐに反応あり。5分もせずに追い始めた、という無線連絡。そしてその直後、静寂を破る2発の発砲音! 隣の待ちのOさんか!?
「アカン、外した! モノはシカ3~4頭、ビニールシートから三本松(←ともに待ち場の名称)方向へ走ってる! あなた君、行くぞ! 頼むわ!」
銃声の10秒ほど後に無線が届く。はたしてその言葉どおり、まず木の枝を踏み折る音があなたの耳に届く。その直後、視界に動く影が見えた! 報告どおり、メスジカ3頭の群れだ!
あなたは若干あわてながらも狙いを定め、まずは一発目を発砲!
しかし命中にはいたらず、シカの群れは元来た方向へ進路を変えつつ(シカはなぜか変な方向へ進路を変えることがある)眼下の崖を登っていく!
きつい傾斜でスピードが落ちたところへさらにもう一発! しかしこれも外れ、シカたちは姿を消した。
はじめて見るシカ、はじめての猟場での発砲。
しばし呆然としていると、無線で指示が届いた。その場で待機するように、とのこと。移動して先回りするのもひとつの手だが、この待ち場は獣道の要衝になっていて、他のシカもまたここを通る可能性は低くないらしい。
はたして、20分ほど後。その瞬間は訪れた!
あなたの放ったスラッグ弾は見事オスジカの首に命中! ビギナーズラック炸裂!
しかしビギナーズラックであろうがコーラックであろうが、命中は命中だ。あなたは見事、はじめてのシカを射獲した。おめでとう! (・∀・)
13:22 解体開始
手伝いに駆けつけてくれたベテランのアドバイスを受けてあなたははじめての解体にとりかかった。杉の木に逆さ吊りにして皮を剥ぎ、ウデを取り、背ロースを取り、内蔵を出し、最後はモモを取って終了。残滓は埋葬だ。
手際よく行えるようになるまではまだまだ経験が必要だろう。しかし、ハンターにとっては小さな一歩だがあなたにとっては偉大な一歩だ!
「やった!」という達成感と「やってしまった…」という罪悪感。渦巻く二つの感情を胸の内に感じながら、あなたはナイフを振るう。それらをうまく消化できるようになるのはしばらく先のことになるだろう。
16:40 精肉
冬の山は陽が落ちるのが早い。山中での解体も時間配分が大切になってくるが、ベテランの助力で早く山小屋へ帰って来れたので、精肉にゆっくり時間を割ける。
しんたま、レンガ、ハツ、レバー…。ここでもベテランの話を聞きながら使い慣れない解体用の骨スキを握りしめ、なんとかかんとか作業を進める。この肉は他の誰でもない、あなたが獲ってきたものだ。助言は受けても、あなたがメインでやるのが筋というものだ。
最終的には、おいしそうなシカ肉のブロックとなった。あとは小分けにして料理で使うだけだ。
精肉後は今日の猟の話題を楽しむ。もちろん話の中心はあなたの活躍。みんな笑顔だ。
狩猟をやっていてうれしいことの一つは、自分が獲った獲物でみんながよろこんでくれること。今日は本当にいい一日になった。(^-^)
18:12 帰宅
始終ニヤニヤ顔でハンドルを握り、帰宅。これまたニヤニヤ顔でひとっぷろ浴びると、あなたは戦利品のシカ肉を眺めた。とてもいい色でうまそうだ。
何日か熟成させた方がいいとは聞いていたが、あなたは今すぐに食べたくて仕方なくなってきた。
居ても立ってもいられず、あなたは気がつくと鹿の竜田揚げを作っていた。初挑戦だったので衣のつけ方をちょっと失敗した。orz
でも、味は最高だ。しとめた達成感とみんなの笑顔、焼酎の酔いなどが極上のスパイスになって、ついつい箸を動かしてしまう。気がつけばあなたは持ち帰った肉のうち半分も胃に収めてしまっていた。
もう半分は大切に熟成させておく。また何日かしたら食べよう。
手と肩と鼓膜に刻まれたスラッグ弾の感触、そして肉の味を思い出しながら、あなたは眠りにつく。今日はいい夢が見られるだろう。
…と、今までの画像やら動画やらを組み合わせて、フィクションのバーチャル猟師体験をつづってみました。
ハンターになれば、このような休日があなたを待っているかもしれません。悩んでいる方の判断の一助となれば幸いです。(´∀`)
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Comment
読み入ってしまいました(*゚∀゚*)
小説、ゲーム感覚で面白かったです。
猟師に憧れる日々です。
動物を自分で殺して捌く、私にできるのか?と悩み、やってみないと分からない、と結論を出し、仕事とまだ幼い息子と趣味をどう繋げるのかを考えています。
僕には子はないのですが、男親は子供、特に息子が自分と同じ道を歩むとうれしいそうですね。息子さんとも狩猟に興味を示してくれるでしょうか。月光さん次第でしょうかね! (^-^)
良いですね!
私はエアーなので巻き狩りとは縁がありませんが、楽しく読ませていただきました。
子供達は釣りから始まり、魚の頭を落として内蔵を出し血にまみれ、、、
罠では獣道や足跡、糞を見つけてトレーサーとなり、解体や精肉で血まみれになり、、、小学生でも今では立派なハンターアシスタントです。
いずれ装薬を持って、プア様の指示で巻き狩りをするハンターに!
それはすごい! 将来有望? ですね。あとはおいしいジビエを与えればいずれ立派なハンターになってくれることでしょう!(・∀・)
では僕はその時までに猟犬を仕込んで猟隊の親方になっておかないといけませんね。がんばらないと。( ̄ω ̄)
おもわず読み耽ってしまいました。
とても面白かったです!
ぜひ空気銃の鴨撃ち版もお願いします( ゚∀゚ )
自分は今年からオフロードバイクでの流し猟も始めるのですが、
冬の朝の寒さと布団の暖かさが最初の難関ですねー
はい。その②が単独空気銃猟編の予定です。(・∀・)
猟欲にみちみちているといくら寒くても起きられるけど、バイク猟となるとやはり寒いでしょうね…。あったかくしてお出かけください。( `・ω・´)ゞ
実体験に裏打ちされたノンフィクション!
自分が地元の山に入っているのを想像して、いいなぁ…(*^。^*)
とほっこり読みました。
Naooさんとかぶりますが、僕も通勤兼山バイクで125のオフロードの中古を買ったので、
明日は下調べで池めぐりと、知人に自由にやっていいと言われた休耕田での距離測定やキジバトデコイの設置場所の検討に行ってきます!
デコイ猟は一人用カモフラテント買って、じっくり待ち撃ちやろうかなという計画です(・∀・)
あと、教習資格認定の申請が完了してあとは待つだけなので、数か月後には散弾も所持する予定でっす(^^)v
バイクいいですよー。僕も山行きメインたまにツーリング、ぐらいのつもりでクロスカブを買ったんですけど、今は移動のほとんどがバイクになっています。クロスカブはカブなので街乗りも楽でいい買い物でした。(・∀・)
装薬銃も取得するということで、おめでとうございます。バイクだと車より険しいところまで入れるけど、進むのは進めても戻ってくるのが難儀だったことがあります。引き時に注意して行ってきてください。(^-^)