狩猟やジビエを通じて、人生の血肉を得たり得なかったりするwebサイト。貧乏がなんだ!
たとえば農家の方から有害鳥獣駆除の依頼があれば、それが正式なものでなくとも、なんとか協力しようとするハンターは少なくないと思います。その理由のひとつに「ハンターと農家は共生の関係にあるから」という点が挙げられます。ハンターは獲物を追って農地を走り回るのを大目に見てもらい、農家は作物を荒らす獣を退治してもらう。昔から続く里山の日常です。
しかし、近年猟場の近くで農業を営んでいる人たちの話を聞いていると、ひょっとしたらこういった関係もまもなく終わりを迎えるんじゃないかという気がするようになってきています。誰の口からも、似たような意味の言葉が漏れてくるからです。
「あまりにも獣害が多い。このままじゃ農業を続けられるかわからん―」
電気柵。農地全域に張りめぐらす必要があり、決して安いものではない
僕が通っている猟場で聞く話では、特に鹿と猪に悩まされているそうです。農作物はほんの少し手をつけられただけでも、もう傷物になってしまって値がつかない、とのこと。電気柵は今のところ効果はあるけど、柵の購入に拠出される補助金は雀の涙で、ほとんどを自腹で支払うことになる。しかも、電気柵だって完璧じゃない。越えられることもある。そうなったら大損だ、とも。
痛手はそれだけにとどまらず、その他にも冬の荒耕耘、剪定、代掻きなどの労力、トラクターやコンバインなど農作業機械のリース代あるいはローン、それらの燃料費、肥料費、農薬費、水利費などなど、農家でない者には想像もつかないほどの膨大なコストが、あともうほんの1週間もすれば収穫によって回収できるというのに、その数日前に全滅させられたこともあったそうです。
「アンタ勤め人か? 毎月の給料を3割も4割もずーっと減らされ続けたら、そんな仕事やる気になるか?
ワシらは今そんな状態やねん」
猪に荒らされた田んぼ。食害、踏み倒しだけでなく、畦を破壊されることも
こういった話はけっしてここだけの特別な事情ではなく、日本全国の山間部や里山であればむしろこれが常態となりつつある、あるいはもうなっている。というのが、日本の農家の現状だそうです。
僕が銃を手にしたきっかけは、おいしい鴨鍋が食べたかったからです。でも、こういった話をあちこちで耳にするうちに、動機のうちいくらかは「農家さんの力になりたいから」になりました。空気銃で倒せる害獣となると中型ほ乳類までなので現状はあまり力にはなれませんが、おかげで1種を持ちたいという意欲につながりました。あんまりほめられたことのない人生だけど、ここはちょっとがんばってみようかな。なんといっても、米は国産に限る。