ハンターになってわかったみかん農家vsイノシシ闘争の深刻さ

公開日: : 最終更新日:2016/10/20 ハンターになってわかったこと

イノシシ

ハンターをやっていると農家の方から直接獣害の深刻さについて話を聞く機会が数多くあります。

しかし、それはたいてい、ばったりと出会ったその場での立ち話という形がほとんどで、被害に遭っている農地の最前線を目にすることはほとんどありませんでした。

今回、その被害の最前線がどんなものかがよくわかるみかん農園のウェブサイトを見つけてきたのでちょっと紹介します。

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最大の問題は食害ではない?

木へのダメージ

和歌山県海南市下津町のみかん農家、鈴木農園。去年のみかん収穫シーズンからイノシシの被害が頻発するようになったそうで、園のホームページにはイノシシ被害を別枠で取り上げたページが設置されていてその深刻さが窺えます。

猪のみかん食痕

なんでも食べるイノシシはみかんも当然食べます。器用に皮をむいて食べるそうで、食害にあったみかんの樹や根元には、こんな感じでみかんの皮が散乱しています。

しかし、鈴木農園のイノシシ被害ページを見ていると、最大の問題はどうやらみかんの食害ではないような感じ。

露出したみかんの根

イノシシはいろんなものを食べますが、ミミズや幼虫、植物の根など、どうやら土の中に好物が多いみたい。山に入っても、イノシシの多いところではいたるところが掘り返されています。

これを本当に動物がやったのか、機械で掘ったんじゃないのか? と思ってしまうほどひどい場合も。肉と骨でできたブルドーザーみたいなものです。

どうもこの習性が問題なようで、農園でもあちこちの地面をほじくり返すようですが、その際にみかんの根を地面に露出した状態にしたり、鋭い牙で切り裂いてしまったりするのが食害そのものより大きな被害であるよう。

そのまま放置しておくと、木が弱ったり枯れたりしてしまうのだとか。

根の埋め戻し

根が掘り返される→埋め戻す→掘り返される→埋め戻す→掘り返される→埋め戻す(以下ループ)・・・。被害に遭う木も1本や2本ではありません。

しかもこれは、いくら労力を費やしたところで以前の状態に戻るだけ。現状維持以上のことはできないわけで、しかも根に受けたダメージの大きい木はいくら埋め戻したところでやはり枯れてしまうそうです。

せっかく育てた樹を切り、一から育て直さなければならず、収穫出来るまでは4・5年、美味しい果実をまとまって収穫出来るようになるまでにはもう3、4年かかり、辛い思いをする事になり、この事態だけは何とか避けなければなりません。

この一文だけでもつらさが伝わってきます。

もうちょっと木に成らせていた方がおいしくなるのはわかっているけど、このままではイノシシにやられそうだ、という時は、まだちょっと早いのは分かっていても、被害にあうのを避けるために収穫してしまうこともあるんだとか。

みかんを食べていると「水っぽいみかんだなぁ」というのに当たることがあるのは、味より樹を守るために早めに収獲することを選んだからかもしれませんね。(´・ω・`)

設備へのダメージ

木へのダメージと同じぐらい問題なのが食害・・・ではなく、設備へのダメージ(おそらくですが)。

大柄なものではゆうに100キロを超える個体もあり、近年ではかつて家畜だったイノブタとの交配も進んでより大型化が顕著であると言われています。そんな動物が群れをなして、人間が歩くために作ったあぜ道やら石垣やらを日夜練り歩くのです。

破壊された石垣

ここには以前、きっちり整備された石垣があったとのこと。しかし今はイノシシに無残に破壊され、見る影もありません。これを修繕するのも重労働、しかもこれまた以前の状態に戻すためだけに必要な労力。

発展させるためならまだしも、えっちらおっちら作業をしたところでやっと過去の状態に戻るだけ。しかも1度や2度で済むという保証もない。心が折れかねない作業。

みかん農園のイノシシ

こいつがその農園に出没するイノシシ! 今まさに地面をほじくり返していたところですね。鼻のところに土がついています。

人間をまったく恐れないようで、収穫しているほんの10メートルほど先で餌をあさっているそう。

イノシシの好物ムラサキカタバミ

僕は単にカタバミと呼んでましたが、このムラサキカタバミの球根が大好きな様子。知らなかったぜ・・・。

我々はハンターだとは言ってみても、普段は市街地に住んでいて出猟はほぼ週末オンリー、それもほんの限られた猟期のみに趣味として獣と向き合っているだけ。

それに対して、こういった農家の方は年がら年中、それも生業として死活問題になりかねないところで獣害と直面しているだけあって、その経験値と観察眼は僕のような若年ハンターとは比べものになりません。

この鈴木農園さんのある海南市下津町、ハンターマップで見ると銃猟OKなんだよな・・・。そんな遠くないし、一度話聞きに行ってみようかな。デコポン買うついでに。(・ω・ )

イノシシ被害ページには他にもたくさんの記事があり、今日の段階では情報も新しいものばかり(2014年12月~2015年9月)なので、ハンター目線で見ても役に立つ情報が載っています。お時間のある時にでも、ぜひ。

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Comment

  1. ltchughes より:

     なんと、そんな被害があるのですね。みかんや栗を作っていますが、山から離れていますので、動物被害はありません。代わりに人間による被害があります。

     サクランボは昨年、鳥に花を全部食べられました。実がつき始めたらネットを張ろうと考えていたのですが、まさか花の段階でたべられてしまうとは、、、と残念な思いをしました。

     イノシシ、探して見つけられる様なものでは無いと思いますが、ちょっと探し回ってみたい気になりました。

    • spinicker より:

      動物被害がないのはいいことですが、人間被害ですか。なんとなくYの字型の枝で柿の実を失敬するカツオをイメージしてしまいました。

      確かに花の段階でいかれるとは思いもよらないですね。自然おそるべし。(;゚Д゚)

  2. monndou_n より:

    私の田舎は和歌山です。家庭菜園程度しかしていませんが、将来のためにと植えた、柿、栗、プルーン、ゆず、榊等々の木は、柵をしているのにもかかわらず、鹿の被害により全滅となりました。農作物も全ていかれてしまい…。地元には、猟師は一人もいないようで、近所の人も困り果てています。そんな事から、猟師になる事を決意しました。
    現在、鹿用の箱ワナと、くくりわなを製作中です。来週中には完成させて、登録証が届き次第、設置したいと思っています。

    • spinicker より:

      イノシシもたいがいですが、シカも困りものですね。

      シカの多い地域ではシカの食べない植物しか残らないとか言われてます。ご近所にハンターがいないということでしたら、monndou_nさんにかかる期待は大きいことでしょう。ご活躍をお祈りします。あと、できれば後進の指導を!

  3. 藤屋 より:

    「山を崩す」と言われるように、括ったシシは一晩で5m範囲の様子を変えてしまいます。山の持主のお百姓は「どうなってもかまわん」と言ってくれてます。画像のシシはモロ豚系ですね。純水種はもっと鼻が長いです。フクシマで放たれた養豚の混血シシの第三世代が茨木を超えて埼玉に入ってるとの話も聞きました。

    • spinicker より:

      山を崩す、というのも納得。初めてシシの掘り跡をみたときはマジでユンボか何かだと思ったものです。環境への適応力もすごいみたいですね。イノブタでない完全な豚でも、野に放てば孫の世代にはもう牙が復活しているとか聞いたこともあります。(;゚Д゚)

  4. 備後ブービー より:

    尾道・しまなみでは島での猪害が多く、
    犬を使ってるハンターは島へばかり通ってます。
    ・・・「島シシ」として、肉が売れるから。

    ただ、負けてますけどね。
    猪は本土から、毎年自力で補充されてますから。
    なので、しまなみの夜釣りではトイレに行けません。
    虫の集まるトイレは猪のレストランですから。
    毎年、トイレで10件以上目撃されてますからね・・・
    なので、立ちション推奨ですよwww
    ハハハ・・・ハハ・・・ハァ・・・

    • spinicker より:

      そういや海を渡るシシがたまーに新聞に載ったりしてます。フロンティアスピリッツあふれる個体は遠泳してでも約束の地を目指すようです。島の農家さんにとっては迷惑な話ですね。
      夜釣りに行ってトイレでシシとばったりですか。というかそのシチュエーションも恐いですが、どこであっても丸腰でシシと遭遇するのはなんか不気味です。素手だとどうしようもない。。。(´;ω;`)

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