狩猟中の事故紹介その3 他損事故事例

公開日: : 最終更新日:2015/05/31 狩猟ヒヤリハット・事故

タイーホ

狩猟事故紹介シリーズ、最終回は自分以外の人間に危害を加えてしまう「他損事故」の事例、日猟会報40号からの引用です。狩猟事故も数あるなかで、これが一番悲惨だと言えるかもしれません。

我々ハンターはいちおう狩猟中に負傷する覚悟というか、リスクがあることは承知のうえで出猟しています(もちろんそうなりたくはないですが)。

でもハンターではない、そのへんをただ散歩していただけの人とか、山菜採りに来ていた人なんかはまったくそういった覚悟の外にいる、狩猟とはまったく関係のない部外者。やはり自損事故とはレベルがちがう気がします。

銃器関連による他損死亡事故

他損死亡事故(銃)
※事故原因の右下の赤数字は加害者の経験年数

銃器関連による他損傷害事故

他損負傷事故(銃)  日猟会報40号より

原因としては誤射が8件で最多、次いで矢先の安全不確認が3件、暴発跳弾がそれぞれ2件、その他が1件となっています。そしておそらくこれも、軽微な負傷の場合は仲間うちで内々に処理して表面化していないものが何件かはあるはずです。

死亡、傷害あわせて16件、そのうち加害者の経験年数が判明している15件のうち、10年以上のベテランが起こした事故が12件。ハンターは高齢化が進んで新規参入者が少ないので全体としてはベテランが多いということもあるでしょうが、それを差し引いてもこの数は・・・。

思い込みが引き起こす事故

おそらくこういうことじゃないでしょうか。

アルファベット

僕の知人にはこんな感じで、ちょっと癖のあるアルファベットを書く人がいます。

数字

数字はまあ普通です。

で、これら文字群。よく見ると彼の書くアルファベットの「B」と、数字の「13」はほぼ同じ形をしています! ( ゚д゚)

にも関わらず、AとCの間の文字はBであると、12と14の間の文字は13であると認識できるのは、人間が前後や周囲の状況から類推することができる生き物だからですね。

幽霊なんかもほとんどの場合はこれで片付くんじゃないかと思っています。視界のすみにちらっと白いものが見えた。それが仮にまったく同じものであったとしても、見かけたのが有名な心霊スポットであれば「幽霊」になって、昼下がりの住宅街であれば「洗濯物か何か」だと脳が判断するんでしょうね。

そんな感じで、高機能だけど記憶違いとか早合点とかをしてしまいがちなのが我々の頭蓋骨内に浮かんでいる器官、脳ってやつです。「人は見たいものしか見ない」って言葉もあるぐらいです。(´・ω・`)

誤射もそんな感じで起こったはず。猟場で茶色いものがちらっと見えたら、前後や周囲の状況からそれは「獲物」だと判断してしまう。経験の長い、自信のある人ほどそうかもしれません。僕のようなぺーぺーは自信も経験もないですからね、よく見ないと恐くて撃てません。

バックストップ原理主義でいこう!

ライフルの貫通力を思い知らされるのが死亡事故の1番上、傷害事故の下から3番目。獲物にはきっちり当たってるのに、獲物を貫通してさらに人間に着弾。えげつない威力です! (((( ;゚Д゚)))

僕も一度、15mほどの至近距離で横っ腹を見せて走る鹿に出くわしたことがあります。絶好のチャンス! ヒャッハー、もらった━━(゚∀゚)━━!

・・・と思ったら、矢先に青空が広がっていたので断念したことがあります。深い山中なのでおそらく誰もいないだろうけど・・・もし誰かいたら、と思うとやっぱり撃てませんでした。orz

でもこういう事故報告を見ていると、やはりあれでよかったんだと思います。これからも単体弾の射撃時には「バックストップ原理主義」をつらぬく所存です。(`・ω・´)

事故が起こらないのがベストだけど、時間を戻せない以上は過去の事故を他山の石として肝に銘じておく。人間は良くも悪くも思い込む生き物だ、という点を頭に入れておく。

シャレにならん事態を起こさないために、来年もその先も日猟会報、特に事故報告欄には必ず目を通していこうと考えています。

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Comment

  1. トキハ より:

    昨日受けた猟銃等講習会でも、事故を起こしたら大変だということが強調されていました。
    誰も起こそうと思ってはいなくても、被害者側の行動を読めていない場合もあるわけで、射程距離外であっても到達距離が長い弾であれば、どこに被害者がいるとも限りませんね。
    まして生業としての狩猟ではないので、釣り同様に楽しめたら釣果(獲物)がなくても満足しないといけませんね。

    • spinicker より:

      山賊ダイアリーの何巻かに「獲物はまた獲れる、安全第一」みたいなことを書いてあったように思いますが、あれは建前でもなんでもないです。まったくその通りです。(`・ω・´)
      また、事故を起こしたら大変(大変って言葉で済むかどうか・・・)なのは当然ですが、場合によっては起こさなくても大変です。車から降ろすのを忘れていた剣鉈をシートベルト検問で発見されて問題になり、銃の所持許可を取り消された人もいます。そうなってからでは遅いですからね。悔やんでも悔やみきれません。orz

  2. mimimi より:

     確かに銃器による事故は危険ですが、事故の発生率としてはいかがでしょう?
     
     銃の所持者数、銃を持ち出している時間等々の因子、そして事故の発生件数から考えた事故の発生率。
     
     あるいはソレ、交通事故より低いのではないでしょうか?
     
     銃は一般的ではないが故に、事故が発生すると必要以上に危険視され、迫害されます。
     
     車などはそれより事故率が遙かに高くても、生活に密着した一般的な存在であるが故に、特に何も言われない。
     
     そんな気がしてなりません。

    • spinicker より:

      よほど悪質でない限り、車の事故は一度起こしてしまってもまたハンドルを握れるようになりますが、銃の事故は一度やってしまうと銃とは永遠にお別れになる可能性が高いです。銃に直接関係のない件(車に積みっぱなしにしていた剣鉈をシートベルト検問でひっかかった際に発見された)で所持許可取り消しになった人すらいます。

      なので、率で考えるべきではないですね。銃を持たない人からの視線がきびしいのはご指摘の通りですし。(;-_-)

  3. 藤屋 より:

    「みみみさん」ブログから回って来ました。冒頭の画像がショックで初コメです。私の師匠は言わば「ガラッパチ」で高校の先輩でも有るので若い頃から知ってるのですが、猟の師匠と成ってから良く見ると人が変わった様に思えます。沈着、冷静,慎重。ナナハンやアメ車をブッ飛ばしてた頃の面影はみじんも有りません。「これがワシの最後の趣味ジャけ」私も「安全第一、確信無いなら撃たない」でやってます。

    • spinicker より:

      はじめまして! (・∀・)

      「昔やんちゃだったけど今はクール」って人はかっこいいですね。これが逆に「昔はクールだったけど今はやんちゃ」だとなんかしまらない、ってかあんまりいませんねそんな人。。。(^ ^;)
      僕自身、装薬銃は慎重に扱ってる自負はあるのですが、空気銃を扱ってる時は心のどこかに油断があるように思います。この記事は自分に対する戒めでもあります。(´・ω・`)

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