SFTS対策に朗報!発見されたマダニの天敵、その名は「カニムシ」!
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登山よもやま話
近畿地方も梅雨入りが発表され、季節は夏に向かって進んで行きます。虫たちもいよいよ活発に活動しはじめる時期。
我々ハンターが「虫」という単語でまず頭に浮かぶのがダニ。こいつにかまれることで、危険な致死性の感染症SFTS(重症熱性血小板症候群)罹患することも。しなくても超かゆい。
心情的に言えば絶滅して欲しいんだけど、そうなるとまた食物連鎖的に何かと問題が出てくるのでしょう。「めっちゃ減って欲しい」ぐらいにしておきましょうかね。
真冬の猟期であっても、獲物の解体後に気がつけば服の上を歩いていたりする、タフで厄介なマダニ。
これまではあまり脚光の当たらなかった地味な虫だったものがSFTSのせいなどもあって研究が進みつつあるのでしょうか。彼らに今まで知られていなかった天敵が発見された、という発表がつい最近ありまして、興味深く記事を読んでいたところです。
ダニハンター、オオヤドリカニムシ
今回の記事・画像の引用元は国立研究開発法人 森林総合研究所のこちらのページ。
そしてこのイケメンがダニの天敵、オオヤドリカニムシ師匠。サイズは成虫で5mmほどだそうで、吸血前のマダニとだいたい同じぐらいの大きさ。
森林総合研究所がこの生物の生態に興味を持ったのはどうやら偶然の産物であったようです。研究ではよくあることですね。
私たちはコナラなどの優占する森林に多いアカネズミやヒメネズミの調査中に、ネズミの毛をつかんで便乗しネズミとともに移動する、オオヤドリカニムシという体長5mm程度のカニムシを採集しました(図1)。オオヤドリカニムシはネズミに寄生して血を吸うようなことはなく、巣の中で一緒に暮らしているものと考えられています。
ネズミの調査をしている最中に発見した様子。共生の関係にあるらしいとか。
しっぽのないサソリのような風貌のこの生物。コナダニという小さなダニが主食であるようですが、研究員の方は思いついたのでしょう。ダニを食うならマダニはどうか、と。
そして。
カニムシの成虫にマダニの幼虫を与えてみたところ、たちまち大きなハサミでマダニの幼虫を捕まえ、40分足らずで食べてしまいました(図2)。カニムシの口は固形物をかみ砕くのではなく、体液を吸うのに適しています。従って、カニムシの食べた後には、中身が空っぽで半透明になったマダニの体が残っていました(図3)。オオヤドリカニムシは、自分と同じくらいの大きさのマダニ成虫にも果敢に襲いかかり、80%程度の確率で捕食に成功しました。このことによって世界で初めて、オオヤドリカニムシがマダニを捕食する天敵であることが示されました。
このとおり、幼虫はもちろんのこと、成虫にも果敢に襲いかかるのだそうです。なんとなくでももっさりでもなく、「果敢に」です。殺る気の高さがうかがえます。
左がカニムシによって体液を吸い出されたマダニ。右は通常のもの。
捕食方法はクモやサソリなんかといっしょですね。消化液を注入して獲物の組織を液化してから吸い上げるスタイル。後にはペラペラになった抜け殻だけが残るという寸法。
全国的にみると、アカネズミにオオヤドリカニムシが高い頻度で便乗する地域と、ほとんど見つからない地域があります。オオヤドリカニムシは、ドングリなどの餌が豊富でネズミの密度が高い森林、そしてカニムシの餌となる小型節足動物が豊富な森林で、生き延びてきたのかもしれません。
まだ研究は始まったばかり、しかもこの研究が進んだところで経済的に大きな成果にはつながりにくいであろうことから、予算なんかもそれほど多く投入されているわけではないでしょう。
カニムシと森林総合研究所の活躍には期待しつつも、当面のダニ対策はやはり防虫剤がメインであることに変わりはなさそう。新成分のイカリジンはなかなかすぐれものみたいですよ!
関連記事:狩猟中のマダニ対策。新成分「イカリジン」はDEETを超えるのか?
もし森でカニムシを見かけてその異様な姿に驚いたとしても、彼らは益虫。指で潰したりせずに、そっと放してマダニ補食の任務を再開してもらうことにしましょう!(・∀・)
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