そろそろ山菜&山歩きシーズン。猟師とお役所推奨のダニ・害虫対策薬剤
暦は既に3月。今年ももうすでに1/6が経過しました。なんてこったい。orz
今年は暖冬ということもあり、狩りに出た2月某日には奈良県でも15℃なんて気温の日があったりして、巻き狩りでシカを待っている時なんかにはありがたい時もありました。重装備なので歩いてると暑かったりするんですけどね。。。
そういったこともあってか、1月2月であっても今年はよくマダニをみかけました。獲物についているのはもちろん、ただ歩いているだけの時でもズボンの上をごそごそ這い回ってたり。
暖冬とはいっても山中なので夜中には氷点下まで下がってるのですが、そんな環境でもどっこい生きてる山の中。敵もさるもの。
以前にもダニについては「師匠がやられた、死者も出た!この時期の山歩きはマダニに注意!」でちょっと取り上げていますが、それからも何度か猟隊の間ではダニ対策についてああだこうだ、と意見交換がなされ、新たな知識を仕入れることができました。^ ^
猟師とマダニ
まずはおさらい、マダニにかまれるとどうなるのか。
幸いにも僕はまだ今のところやられたことはありません。なので聞いた話ですが、基本、超かゆいそうです。超かゆいのが数週間続くんだとか。しかも師匠がやられた時はかゆみに加えてやけどの水ぶくれみたいな水疱ができ、ことあるごとにそれが破裂して服にべったりと体液がついて往生したとか。(-_-)
これだけでももうすでにたいがいですが、マダニが報道で取り上げられるようになったのはやはり「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」による死者が発生したことからでしょう。
SFTSは2011年に中国の研究者らによって発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症である。
(中略)
SFTSウイルス(SFTSV)に感染すると6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こす。
(中略)
致死率は6.3〜30%と報告されている。感染経路はマダニ(フタトゲチマダニなど)を介したものが中心だが、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されている。治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはない。
致死率は最大で30%、で、有効な薬剤やワクチンはない。と。このへんが厄介ですね。
そうそう発症するものではないはずだし今のところ発症の報告は西日本のみであるようですが、万が一を考えるとノーガードで歩くのもおそろしい。どうしましょう!
厚生労働省おすすめ薬剤
厚生労働省検疫所(FORTH)によると、ダニ対策として次のようなことが挙げられています。海外への渡航を想定しているようですが、害虫対策の基本は同じはずです!
- ダニに汚染されている地域に行くことをできるだけ避けましょう。
- ダニは家畜やペットの体にも寄生します。ダニによる病気がはやっている地域では、動物に触らないようにしましょう。
- 袖先がぴったりとした、色の薄い長袖の服を着てください。ダニがくっついたり、ダニに咬まれたりすることを予防できるだけではなく、くっついたダニを見つけやすくなります。
- 皮膚の露出した部分と服に、DEET(ディート)などの有効成分が含まれた、虫よけ剤を使ってください(衣服の下には使わないようにしてください)。特にダニの付着しやすい場所は、頭皮、乳房下部、ウェスト、わきの下などです。
- ダニが多い地域で長時間仕事をする人は、衣服に、虫よけ効果と殺虫効果のある、ペルメトリン(日本では人用には売られていません)を染みこませておくことも考慮します。ただし、ペルメトリンは皮膚につけてはいけません。
ダニに咬まれた場合
- ダニを発見したら、ダニの体内や傷ついた皮膚からでる液体に病原体がいる可能性があるので、できる限り直接手でダニを取ったり、つぶしたりしないようにしてください。可能であれば、皮膚科でとってもらうのが無難です。
- 自分でとる際には、毛抜きや先の細いピンセットを用いて、できる限り皮膚に近い部位でダニをつかみ、ダニの口の部分を壊さないようにゆっくりと上に持ち上げ、ダニを除去します。咬まれた傷は消毒します。
- マダニ類(ダニ媒介性脳炎、ライム病、クリミア・コンゴ出血熱などを媒介します)の場合、早くとった方が病原体の感染のリスクは低くなります。
- ヒメダニ(回帰熱を媒介します)の場合には、吸血する時間が短いことから、すぐに除去する効果は少ないとされています。
3は目から鱗というか、納得したというか。色が薄い服だと発見しやすい、言われてみればそうだなぁ。
そして有効な薬剤、というか虫除けについての記述がありました。「ディート(DEET)」と「ペルメトリン」。この二種類の忌避剤が、僕の周りのハンターがよく使っているものです。
ディート配合の忌避剤
まずは基本情報。ディートとはこういうものです。
国内で流通している医薬部外品の虫除けはディートを10%以下の濃度でしか配合できないのに対し、第2類医薬品として指定されている虫除けではディートを12%まで配合できる、とのこと。このあたりがそうみたい。
海外からの並行輸入品になるともっとディート濃度の高いものがありますが・・・お値段も高いですね。。。orz
こちらはディート濃度34.34%。とのこと。ただ、チューブに入ったペースト状のようなので、外気に露出した肌に直接塗るような感じかな。熱帯地方での活動向けっぽい。日本の狩猟シーンではちょっと使いにくそう。(´・ω・`)
あと、ディートは第3石油類に分類される成分ということで、人によっては肌に塗ることで湿疹やかゆみなどの皮膚疾患が出ることもあるそうです。
ペルメトリン配合の薬剤
ペルメトリンは先述のとおり、国内では人間用の虫除けとしては販売されていません。農薬扱いです。が、僕はこれをメインに使っています。
ペルメトリン濃度2%のこいつを100倍ぐらいに希釈(水500ml+本剤5ml)して猟装の上から、吸入してしまわないように鼻と口をおさえて、極力肌にもかからないようにスプレーしています。
ペルメトリンといえば、
こちらもそうですが、お値段高い・・・。orz
その分ペルメトリンの濃度も高い(20%!)のですが、100mlのベニカSでもなかなかなくならないので、一人分ならベニカSの100mlがいいような気もします。
ちなみに有効期限はベニカSもアディオンも4年。アディオンの方はたぶん一人じゃ4年以内に使い切れないだろうなぁ、僕の用途では。有害駆除には行かないし。(´・ω・`)
※ペルメトリンは基本的に農薬なので、それに準じた注意事項が記載されています。使用する場合は自己責任で、そして注意書きによく目を通しておきましょう!
(追記)コメント欄に、果樹農家さんからのペルメトリンに関する有用な意見をいただいています。ご参考までに!
他にも「哺乳類には影響が少ないのでフロントラインを使う」という意見や、なかには
「首まわりにタオルを巻くだけ」
なんて漢前なのもあって人それぞれ。しかも首タオルの人も、今までマダニにやられたことはないそうです。僕よりはキャリア長い人なんですけどね。運や出猟頻度、地域にも左右されるんでしょうね。( ̄∇ ̄;)
僕は次の猟期からはペルメトリンを服にスプレー+ディート入り虫除けを首すじと頭(坊主頭はやられやすいそうです)に散布。でいこうと思います。マダニ被害0の継続を目指す!(・∀・)
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Comment
この3年ほど、農家的な事をやって来ましたが、今まで運が良かったのか、ダニにやられた事は無いです。ただ、蚊、アブ、ハエがうっとおしいので、腰に蚊取り線香、昨年からは顔に虫除け網のスタイルで活動しています。どちらかというと、ムカデや、マムシの方に警戒がいってしまいます。
私は、今年から他の地域で山林ボランティアにも参加する事になりましたので、とても参考になりました。
先人達の農家スタイル(カーキ色の作業ズボンに古いカッターシャツ)は、ダニ対策としては理にかなったものだったのですね。
蚊取り線香って昔からあるのでなんかレトロな感じですが、それなりに効果はあるんだそうですね。僕は夏になるとなつかしさを求めてルームフレグランスとしてたまに蚊取り線香を焚いたりしています。( ̄∇ ̄;)
虫除けについてはNBさんのこの記事へのコメントが参考になるので、一度見てみてください。果樹農家さんだそうです。
有害に参加しようと考えていたので、この情報はありがたいです!
去年初めて山に入った時、ダニや虫にビビってCHIGG AWAYと言う米軍が使っているらしい虫除けクリーム買って使ってました。
これなら安く済むし、効果も凄くありそうですね。
情報感謝です!
CHIGG AWAYで検索してみました。ディートを含まない虫除けなんですね。ディートが合わない人にはいい選択肢になるかもですね。僕はコガネグモ系がこわいので有害は無理です。orz
虫除けについてはNBさんのこの記事へのコメントが参考になるので、一度見てみてください。
貴重な情報、ありがとうございます。来期、何も考えずに山にはいるところでした。。。
農薬の目的外使用はちょっと危険な感じがしますが、ダニにやられることを考えると、必要ですね。
ダニを体に付けた状態で車に戻り、車から家族にダニが移ったりするのが怖いです。乗車前に全身チェックですね!
僕などは気楽な独り者なので家人への影響は考えなくてすみますが、ご家族がおありの方はたしかに心配ですね。
ペルメトリンについてですが、この記事へのコメントに果樹農家さんからの非常に参考になる意見があるので見てみてください。
当方は二十五年程前、学生の時にやってたサバゲーキャンプでマダニにやられました。
マダニに気づいたのはキャンプから帰って三日間の高熱から更に三、四日後で、その間痛みも痒みも全く無く、毎日風呂に入ってても気付きませんでした。
ある日何気なく膝の内側にあったカサブタを剥がしたらソイツに生えてた足がワラワラと蠢いてた…((( ;゚Д゚)))
以降、動物性アレルゲンによる喘息も発症し十年以上苦しむ事になりました。(現在は完治)
…が、今やってる有害鳥獣駆除では特に薬品等で予防することも無く、原始的ですが度々目視で自分の体を確認して排除する位ですかね…他にはネイティブアメリカンのシャーマンよろしく裾のあたりに紫煙を吹きかけてみたりとか…科学的には効果の程はアヤシイのですが、偉大なる祖先と風の精霊の御力で今の所咬まれずに済んでます。(笑)
spinickerさんも予防法を駆使し、どうか怖いダニにはお気をつけ下さい。(カサブタに生えた足がワラワラと…)
僕の師匠も数日間は気づかなかった、とのことでした。風呂に入っても落ちなかったというところまでいっしょです。水中でも5分や10分は生きていられるということか、タフだなぁ。しかし足の生えたカサブタ・・・こえぇ! (((( ;゚Д゚)))
強すぎる薬品は使わないにこしたことはないですね。同じようにコメントをくださった果樹農家の方からみれば、狩猟用ダニ避けとしてのペルメトリン乳剤使用はちと問題があるようです。農薬のプロの意見なので非常に参考になりました。
ウチは果樹農家でアディオンとかも毎年のように扱っています。その限りの知識で言えば、そういう使用法は、「自己責任」の世界ではあるが、ちょっと認識が甘いかなあと思います。
市販されている農薬は「安全」なものだけど、それは使用手順を完璧に遵守すればという前提での話であって、使用者の無知やずさんな取扱いによる中毒事故(長期間での慢性中毒含め)は、一般人は知らないところで実は少なからず起きています。
まあペルメトリンのような合ピレ系殺虫剤で直接死ぬ事例はまず無いですが、それでも取り扱うには知っておくべきことはいろいろあります(いわば、猟師にとっての銃や実包、刃物についての考えと同じですね)。
たとえば「乳剤」では有効成分を有機溶媒に溶かしてあるので、他の剤型と比べても体内に取り込まれやすい。本来なら「必ず指定の防護具をつけて・必ず既定以上の倍率で希釈して・必ず風下に向けて散布する」ものを、鼻つまんで自分にぶっかけるみたいなことを聞くと、それはちょっと待て待てと。わずかなりとエアロゾルで吸入するのは薬液をちょいと素手で触るより最終的な摂取量は高かったりします。
厚労省も勧めてるし、ということなんですが、それはジャングルに野営してダニまみれ不可避かつ医療体制も担保されないなどという、特殊条件下におけるリスクとベネフィットを天秤にかけての話であって、国内での冬場の猟での用心のためにしては、いかにもバランスが悪い。
で、私が考える「バランスのとれた」「必要十分な」マダニ対策ですが…
市販の虫除けを服にスプレーするのと、首筋など要所にすり込んでおく。あとは獲物に直接触れる時はパーカーのフードとかバラクラバを被るなどして皮膚の露出をなくす、時々服をぬいではたく、帰ったら入念に身体を洗う、というくらいで、とりあえずいいんじゃないでしょうか。
ディートはダイレクトに忌避効果を持つというより、吸血虫の感覚器をバカにするような作用をもつそうです。最終的にダニが食らいつくポイントを決めきれないわけですね。
確かに国内仕様の製品は濃度が低いのですが、ぜひとも高濃度が欲しいのは蚊やブヨの大群の来襲などに対してであって、日帰りの山行きで「ダニをもたつかせる」には問題ないでしょう。
非常に参考になりました。ありがとうございます。
ディートは生物の排出する二酸化炭素に反応する吸血虫の感覚を狂わせる薬品だと聞きました。それはともかく、濃度によりけりだとしても、ディートの方が直接肌に塗布することを想定している分まだましかもしれませんね。
他のペルメトリン愛用ハンターにもちょっと話をしてみることにします。
とても参考になりました。
有害参加の時、実践したいと思います。
更に携帯用液体蚊取り線香も持って行こうと思います。
夏鹿獲ってタタキとローストと天ぷらにして喰い散らかしてやりますよ!
シカの旬は初夏だそうですが、僕はクモが恐いのでその時期に山に入ることはできません。orz
ぞんぶんに夏シカを味わってください! (・∀・)
マダニでわありませんが先日仕留めたししのお腹を出している時に回虫がにょろにょろと出てきました シシをいただく時はやはりよくか熱した方が良いですね。
oh・・・。トキソプラズマについては聞きましたが、回虫も遠慮願いたいっす。orz