「山怪 山人が語る不思議な話」書評!
公開日:
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最終更新日:2016/10/18
書評
山を歩く、それも休日の明るい登山道などではなく、薄暗い森の中で単独忍び猟なんかをしていると、時として
「・・・あれは一体何だったんだ」
というような、不思議な体験をすることがあります。
たとえば、2015年3月8日の狩りバカ日誌で、霧深く見通しの悪い日、方向はわからないけど案外近くから2度聞こえてきた、バイクのキックスタートエンジンをかけそこなったような音もそのひとつ。おそらくバイクに乗った人が藪の向こうにいたんじゃないかとは思うのですが・・・。
もしそうだとしても、その人はバイクのエンジンをかけそこなった後、その場でじっとしていたことになり(聞き耳を立てていたが、その後は何の音も聞こえてこなかった)、それはそれでなんかちょっと気味の悪いというか、理由がよくわからないというか・・・(´・ω・`)
・・・と、この体験を筆頭にして、細かいものを入れれば他にもいくつか、不思議というか合点のいかない話を、猟師としてのキャリアが短い僕でも体験しています。山は不思議に満ちています。
そういった、山中で遭遇した不思議な話を集めたのがこの本「山怪 山人が語る不思議な話(山と渓谷社)」です!
ツイッターでもそこそこ話題になっているこの本、やはり猟師は気になっているようです。みんな同じような体験をしてるんだろうなぁ。僕が買ったのもそういった理由です。
この本、各回のタイトルのつけ方がとても優秀。こんな感じです。
「来たのは誰だ」とか「謎の山盛りご飯」とか「行者の忠告」とか・・・。気になって仕方ねえ! (;゚Д゚)
実際に読んでみると、なんというか、絶妙なモヤモヤ感www
なんだったのか知りたいのに結局わからない、不思議なんだけど結論の出ない、いい意味での「これぞ山怪」といった消化不良感がうまく活字で再現できていて、話の最後に事実だけを淡々と書いて終わるスタイルが逆に不気味感を倍増させています! (((( ;゚Д゚)))
読み手の知識や経験によってうまく消化できる話もあれば、同じ話でもある人にはやっぱり不思議だったり、読者の数だけ楽しみ方がありそう。
なかには「金や銀などの鉱山近くでは大蛇の話が多く残っている」というくだりなんかもあって、なるほどと思ったりもしました。盗掘対策に持ち主がそんな噂を流したりしたのかもしれません。
あくまでも山中での怪しいエピソードを集めた本であって、怪談本ではありません(それに近い話もありますが)。結局「それは何だったのか」という結論は出ていないのがほとんど。でも、そんなものなのです、「山怪」って。
個人的評価 ★★★★★★★★☆☆(8/10点)
おもしろかったです! 若干安い(1200円+税)のも(・∀・)イイ!
気になるところといえば、無理くり不思議にしてるんじゃないの? と思えるエピソードがある点(カケスがチェーンソーの真似をするという話があるのは「マタギカメラマン」を名乗る筆者なら知ってるだろう、とか)。
あと、これは意図があってのことだろうけど、挿絵や写真のたぐいがゼロで、延々と活字だけが続くので若干読みにくい点。で、-2点です!
(読者の空想の邪魔になるからか、単に経費の問題かはわからないけど・・・不気味感を演出する、表紙のような挿絵とかモノクロの画像とかがあるとなおよかった。(´・ω・`) )
全体的にはいい出来だと思います。手元に置いといて、ハンターとしてのキャリアが長くなってきたらまた読みたい本。不思議な話が好きな人にもおすすめです!
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Comment
山に実際に住んだことがあると、そのような(その本は読んではいませんが)不思議なことがさほど不思議ではない、よくあることと思うかもしれません。
わたしも8年間紀州の山深い村部に住んでいましたが、それは不思議な話がありすぎて、作り話にしてはうまく出来過ぎているし、でも多数の人が同じことを相違なく言うのを聞くと、もしかしてホントかな…怖っ。
つい最近までは土葬だった墓地が集落に点在しているし、獣や鳥も多数山中では死んでいるわけですから、火の玉なども出て当たり前かもしれませんね。
昔から海辺に比較すれば山奥からほ方が文化が生まれている気がしますし、山岳信仰含め、山には“不思議と言われる現実”が今でも存在していると思います。
父方の祖母が高野山出身で、小さい頃にはよくあのあたりへ行く機会があり、不思議な話も聞きました。
真冬の夜、家人の帰りを待っていると、木戸が開いた。帰ってきたのかなと見てみると誰もいない。それどころか雪の上に足跡すらない。後日、その家人は滑落死体として崖下で発見され、やはりあの時木戸を開けたのは魂だけになって帰ってきた家人だったのだ、とか。
僕はお化けやなんかは信じていない科学信奉者。のはずなんですが、こういう本を買ってしまうところを見ると、やはり心のどこかに不思議な話を欲しているところもあるのかもしれません。( ̄ω ̄)
文字ばかりの本、好きです。想像をかき立てられます。
挿絵も良いのですが、映像を押しつけられてしまって、自分なりの想像が膨らまなくなってしまいます。
あえて挿絵をなくすことで、読む人独自の世界をイメージして欲しいのかもしれませんね。
その本、買ってみたくなりました!
僕はビジュアル欲しい派なうえに表紙の挿絵がとてもいい出来なので、こんなテイストのやつをちょこちょこはさんでくれたいいのにな、とちょっと不満ですが、内容自体はいいですよ。筆者が独自の解釈を加えたりすることなく、聞いた話をただ聞いたままに紹介するような形なので、すべては読み手にゆだねられています。そのせいで「・・・だから何?」ってなるときもありますが。。。( ̄∇ ̄;)
夜明けと同時に罠の見回りに山奥深く入って行くと、丁度良い枝振りの木が沢山有ります。踏み台に良い切株がその下に有ったりすると背中に冬でも汗が滲みます。富士山の周りでは毎年遭遇するらしいです。私のやってる事はシシやシカは山の恵みとして成立するとして、間違って掛ったキツネやタヌキは殺生に終ってしまいますから、私、最近肩凝りが酷いのは・・・?
くくり罠は外道を獲ってしまったときの扱いが難しそうで二の足を踏んでます。くくる強さである程度回避できるとは聞きますが、シシは必ず捕らえてタヌキは必ず脱出させるとなると簡単には行かなさそうですし・・・。(´・ω・`)
仏さんは今のところ幸運にも発見したことはないですが、深い山中で切り株の上にそろえて置いてあった革靴なら見たことがあります。( ̄∇ ̄;)