誤射事故防止のために。ハンターが知っておくべき目の錯覚と脳の話。

公開日: : 最終更新日:2017/06/18 狩猟ヒヤリハット・事故

脳

またしても発生してしまった、猟銃による事故。

 10日朝、島根県出雲市の山林で、猟友会のメンバー2人が散弾銃でシカを駆除していたところ、一方が撃った弾がもう一方の男性にあたり、男性は大けがをしました。

 10日午前8時50分ごろ、出雲市の山林で市内に住む78歳の男性がニホンジカを散弾銃で撃ったところ、シカの後方にいた山根安夫さん(80)に弾の一部があたりました。

 山根さんは弾が右腕を貫通していて重傷ですが、命に別状はないということです。2人は猟友会のメンバーで、10日は朝からニホンジカの駆除作業中でした。

 現場は林道の下ののり面で、木や雑草が生えていて見通しが悪く、出雲警察署が事故の原因を調べています。

https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20170610-00000043-jnn-sociより

ソースを読むかぎり、今回の事故の原因は、本文にもあるように見通しの悪さからくる「矢先の安全不確認」であると思われます。

あと「弾の一部があたりました」とあるので、装弾はたぶんバックショット(シカ撃ち用の6粒ないし9粒ないし12粒の大型散弾)か。事故の多い装弾よねこれも。(´・ω・`)

猟銃による事故、原因は大きく分ければ三つ。

まずは今回のような「矢先の安全不確認」。次に意図せず撃発させてしまう「暴発」。そして最後が獲物でないものを獲物と誤認して矢をかけてしまう「誤射」。どの事故も人の命を奪いかねない危険なものです。

今回はそのうちの「誤射」について関係ありそうな脳の働き、目の錯覚について考えてみようと思います。

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脳はわりといい加減?

野球好きな人なら知っているかもしれませんが、数日前、オリックス-中日戦で珍しいプレーがありました。ホームランを打ったバッターがホームベースを踏み忘れてアウトになるといったものです。

審判の仕事

その時の画像がこれ。…というのは実は真っ赤なウソです。

審判の仕事

http://blog.livedoor.jp/rock1963roll/archives/4797153.htmlより

こっちが本当の画像。先の画像にはいなかった一塁塁審が、ホームベースのすぐ近くでしっかりとバッターの足元を注視しています。こうやって確認していたんですね。

が、実際のところ、ホームランが出た後に「一塁塁審は何やってるかな」なんて気にする人はほとんどいません。目が行くのはやっぱり打ったバッターであるとか出迎えるチームメイトであるとか、あるいは打たれたピッチャーやキャッチャーの様子。どの審判がどう動いてるかなんて頭にないのが普通でしょう。

やきう民である僕はホームランを打ったバッターが帰ってくるシーンなんて何度となく見ているのでベースを確認している審判だって何度となく目に入っているはずなのに、審判に注意を払うことなんかないのでいてもいなくても気づかない。
実際は下の画像だったけど、僕の頭の中では上の画像でした。

網膜では捉えているはずなのに意識の外にあるので覚えていないわけですね。

錯視一覧

http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/meijiCOE2009.htmlより

こちらのページによると、錯視・錯覚はこういう形に分けられるとあります。審判が見えなかった(覚えていなかった)のは左下の赤○「盲点ではものが見えないこと」に該当するんでしょうかね。

(※目には本当に「盲点」という点があり、審判の件は盲点には当てはまらないようです。コメント欄にて指摘いただきました)

どうやら我々の目と脳は見ているはずのものを見ていないと認識したり、その逆もあったり、見えていると認識していても正しい姿では認識していなかったり、とわりといい加減なものであるようです。

先ほど紹介したページにはいろんなタイプの錯視・錯覚があります。ここで少し紹介すると、

錯視・錯覚

http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/meijiCOE2009.htmlより

「赤の渦巻き」

赤紫がかった赤い螺旋とオレンジ色がっかった赤い螺旋があるように見えるが、どちらも同じ赤である。

Copyright A.Kitaoka 2002
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)

http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/meijiCOE2009.htmlより

マジすか! Σ(゚д゚;)
ちょっと拡大してみよう。。。

錯視・錯覚

ここまで拡大するとわかります。マジでした。どちらの赤もHTMLカラーコードでいうと#FF0000で同じ色でした…。

他にもまだまだあります。

錯視・錯覚

http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/より

「蛇の回転」

蛇の円盤が勝手に回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2003 (September 2, 2003)

http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/より

ヘビのような円盤がうねうね回って見えます。スマホとかの小さなモニターだとわかりにくいかもしれません。なるべく近づいて見てみてください。

錯視・錯覚

「秋の沼」

中の正方形領域が動いて見える錯視。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2000

http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/より

上下にスクロールさせてみるとよくわかります。グラグラ揺れてます。揺れてないのに。(´・ω・`)

錯視・錯覚

「渦巻きアンパン」

灰色の線は同心円なのだが渦巻きに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 1998

http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/

…渦巻きに見えます…。ポンコツか俺の目は。というか脳は。orz

このように、視覚と脳の相関関係を熟知している人にかかれば、錯視・錯覚画像なんぞは簡単に作り出せてしまうということです。時と場合によっては人間は見たものを正しく認識できない生き物なのです。(´・ω・`)

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これに似たようなことは狩猟中にも起こります、もちろん。僕もあります。

忍び猟の最中、獲物を探して杉林を歩いていた時。

杉木立の向こうに違和感をおぼえたので目をこらすと、シカが首を突き出してぬぼーっと立っているではありませんか!

鹿イター━━(゚∀゚)━━!

ドットサイトの照準を合わせ、引き金を引くタイミングを計っていると…どうも様子がおかしい。シカは微動だにしません。息づかいに伴う微妙な上下動ぐらいはあるものだけど…?

これは変だ、と単眼鏡でのぞいてみたところ。ひっくり返った切り株でした。上を向いた根っこが角のように見えてシカと誤認したようです。orz

「人は見たいものしか見ない」と言われるのはこういうところもあるんでしょうね。シカの多いところでシカを探している時にシカっぽいものを見るとシカだと思い込んで錯視してしまうと。

あとは犬に追われて走ってくるイノシシの様子がおかしいので銃を下ろして穴が開くほど注視すると、シシではなくカモシカだった。ということもあります。本当に穴を開けていたら大変なことになっていた!

引く直前、走り方に違和感をおぼえてハッと我に返ったので助かりました。ドットサイトは拡大機能がないので、遠目の獲物の認識はちょっと苦手です。(-_-)

茶色みが強いシカに対し、シシもカモシカもどっちも黒っぽくてよく似てます。遠目だとシルエットもまぁ似てるといえば似てる。
ただ走り方がカモシカはちょっとバタバタしてて不器用な感じ。走るより急勾配の登り下りに特化してるのかも。

その時の猟場はシカもシシもカモシカもいる場所だったので見極められたけど、これがもしシシの濃い猟場だったりしたら…。目ではカモシカの姿を捉えていても、脳の方でシシだと認識して撃ってしまっていたかもしれません、僕のポンコツ脳だと。誤射の一丁あがりです。(´・_・`)

錯視・錯覚

先の図表でいうとこのへんですね。これも錯視のひとつです。

事故を防ぐための運転テクニックとして「かもしれない運転」というものを習いました。子供が飛び出してくるかもしれない、あの右折車は先に曲がろうとするかもしれない。可能性を広く考えて行う運転のことです。

狩猟においても錯視・錯覚が起こりうることを頭に入れ、「かもしれない狩猟」を徹底できれば、狩猟事故のうちの「誤射」は大幅に減らせるはず。

事実、過去には有害鳥獣駆除の最中にサルと見間違えて人間を撃ってしまったという誤射事故も起こっています。ありえないこととは考えず、しっかり意識して猟に臨みたいものです。

ちなみにこの錯視という現象、どうやら人間に特有というものでもないようで、

猫の目にも起こりうるようです。( *´艸`)

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Comment

  1. onesuke より:

    真剣に見てたら気分が・・・(;@@)
    人との目なんて結構いい加減なもんですよ。
    ホント見たいモノしか見ないから、思い込みとか勘違いしますよね。
    昔から、常に観察眼を持てと!、道場の師匠に言われ鍛えてるつもりでも、
    思い込みします。
    これからは、もっと注意しなければ!

    • spinicker より:

      onesukeさんは格闘技経験者でしたか。何をかくそう実は僕もでして。北斗の拳世代なもんで、空手とか少林寺拳法とかはやってました。( ´ー`)

      スラッグ弾の威力はえげつないですからねー。ライフルみたいなジャイロ回転はなくても、当たり所次第では40mぐらい先のシカの胴体を余裕でぶち抜きます。お互い気をつけましょう。( `・ω・´)ゞ

  2. ltchughes より:

     ネコの錯視、かわいい!!ネコは人間と同様に遠近感を掴むために顔の前に両目が位置していますから、同じ事になるんですね。

     そうなりますと目が横にある鳥類と、目が前にある鳥類(フクロウなど)とでは違いがあるのか、興味が出てきますね。

     勘違いなどによる誤射。非難するのは簡単ですが、誰にでも起こりえる事ですね。気をつけましょう!!

    • spinicker より:

      あのにゃんころは僕も萌え死にするところでした。(*゚∀゚)

      気をつけても起こるのが事故、ぐらいに思ってた方がいいかもしれません。あまり考えすぎても何もできないけど、事故よりは確認に念を入れすぎて獲物逃がす方がまだましですよね。確信が持てず引けなかったことは何度もありますが、それでいいんだとも思ってます。

  3. sawara より:

    「網膜では捉えているはずなのに意識の外にあるので覚えていない」のと、「盲点ではものが見えない」のとは違いますので、お間違えないように。 

    • spinicker より:

      調べてみたら、比喩とかじゃなくて目には本当に「盲点」という点があるんですね。というかこっちが本家ですね。勉強になりました。ありがとうございました。( `・ω・´)ゞ

  4. 白熊 より:

    人間の脳はフルパワーで使うと「餓死」すると言われてますから、ある程度脳はサボろうとするんですよ。
    難しい話ですがゲシュタルトを一つしか以上出来ないので、鹿と切り株で言うなら鹿に見えたら鹿に、切り株に見えたら切り株に、決して鹿と切り株同時に両方見えないんです。
    人がコレ!(鹿)と思ったら脳は些細な物でも鹿と認識しますし、それ以外は要らない情報なので「見えなくする」んです。←盲点

    合理的なようで結構厄介な仕組みです。

    • spinicker より:

      慣れとか思い込みってのはないと面倒だけど、あったらあったで難儀なものですよね。僕は早合点しがちなところがあるので、よく思い込みからくる早合点でヘマしてます。orz

      >鹿と切り株で言うなら鹿に見えたら鹿に、切り株に見えたら切り株に
      不思議なことに、同じものを見ているはずなのに認識が変わると一瞬で見えているものも違って見えるのが不思議で仕方ない…。銃猟では「動くものはすべて人間だと思え」なんて言われるのも納得です。

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