脱砲でも矢先確認でも防げない狩猟事故。猟犬のトラブルを考える。
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狩猟ヒヤリハット・事故
猟期前イベントのひとつ、日猟会報の配布。僕も先日、支部の班長さんから受け取りました。

僕はこの日猟会報の狩猟事故のページに必ず目を通すようにしています。ハンターになって数年が経過し、ちょっと銃器の扱いに慣れつつある自分のネジを巻き直す意味でも。
昨年度もいろいろな狩猟事故がありました。が、発生のメカニズムはたいてい同じ。

これらの確認不足が原因である場合がほとんど。
ん? 「足場」が新たに追加されているような。自損事故ではよく落下事故が起こっているので、そのへんを考慮したのでしょう。
しかし、狩猟中の事故には、ハンター自身の直接行動に因らないものもあります。
それは「猟犬の咬傷による事故」。ある程度しつけることはできても、そこは畜生のこと。最終的にはどう動くか読み切れないところがあるのも事実です。
今回は、昨期に報告された猟犬がらみの事故を、日猟会報第43号の記載から考えてみることにします。
猟犬以外の事故については原因等で特に目新しいところはなかったので割愛しています。ということで猟犬以外の事故については過去の記事をどうぞ。
関連記事:気持ちを新たに昨年度の狩猟事故を振り返る。狩猟事故2014
関連記事:狩猟中の事故紹介その2 自損事故事例
関連記事:狩猟中の事故紹介その3 他損事故事例
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昨年(H28年)度の猟犬がらみの事故

昨年度の猟犬がらみの事故をピックアップしてみました。関係のない件はブラックアウトしています。
こうして見ると、やはり他者、あるいは他者の飼い犬への攻撃が目につきます。幼稚園に入り込んだ猟犬が先生と園児にかみついてケガをさせた、という事故は記憶に新しいところです。
僕もいずれ田舎へ(南河内もそれなりに田舎ですが)移住して猟犬を飼いたいと思っているので、こういった事故は気になるところ。なぜこういった事故が起こってしまうのでしょうか? (-_-)
猟犬の気性と飼い方
猟犬は一概に「洋犬は人なつっこい、和犬は気難しくて親方以外にはあまりなつかない」などと言いますね。
たしかにそういった傾向はあるんだろうけど、それ以上に関わりがあるのは接し方、育て方であろうと思われます。
以前、上記のような猟犬事故を起こしたケースのことを関係者から実際に聞いたことがあります。
そこの猟隊では、猟犬を山小屋で飼っていました。山小屋の敷地内に大きな鉄の囲いをこしらえて、そこで多頭飼い。自宅からそう遠くないので、親方が毎日世話しに行くような形です。
ただ、散歩に連れて行くことはなかったとのこと。そこそこ広い囲いだし多頭飼いなのでのびのびとじゃれ合うことは可能で、運動ということについては問題なかったのかもしれません。

こういう形では、運動面では問題なくても、散歩に行かないとなると、群れの仲間以外の犬と接することがない。人間との関わりも世話しに来る親方だけ。外の世界に免疫のない犬になってしまいます。
犬は案外臆病な一面もある動物。獲物を追っているうちはよくても、集中が切れたときに目の前に普段なじみのない、親方以外の人間や他の犬が現れたら、相手のことを知らない恐怖心から攻撃してしまった。といったところもあるのかもしれません。
事実、気難しいと言われている紀州犬だけど、自宅で普通の犬のように育てられている猟犬も二頭知っています。一頭は人間大好き他の犬はもっと好き。もう一頭はこわがりではあるけど広いところにいるうちは他者への攻撃性は皆無です(車内などにいる時は攻撃的ですが)。
ナショジオの番組「ザ・カリスマ ドッグトレーナー ~犬の気持ち、わかります~」でおなじみシーザー・ミランは、「犬が起こす問題のほとんどは飼い主に原因がある」と主張しています。
やはり猟犬であっても、しつけをおそろかにしてはいけないのはペットの犬と同じということでしょう。
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と、ここまでを見たところ、しつけ次第で猟犬がらみの事故は防げそうな気がしますが、先ほどの事故報告の最後のところには、こんな記載がありました。

犬直接ではなく、犬に追われて興奮したシシが第三者を攻撃してケガをさせた。という事故です。これはさすがに犬のしつけ方法で防ぐのは無理な気がします。(´・ω・`)
記載ではこの一件だけですが、日猟会報に載っている事故は、日猟に狩猟事故共済保険使用の申請があった分だけです。報告のない、共済の対処になっていない狩猟事故はこれ以外にも発生しているはず。
結局、しつけと猟場のチョイス次第で減らすことはできても、猟犬が原因の事故を完全に防ぐことは難しい。というのが正直なところなのでしょう。
これから猟犬を飼おうと思っている人、実際に飼っている人は、それを忘れることなく備えを怠らず、次善策を常に頭に入れて狩猟に臨むしかないのかもしれません。(´・ω・`)
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Comment
去年シーザー・ミランの本、読みましたよ。
犬は全ての犬がリーダーの素質を持っているわけではなく、パック・リーダー(群のボス)を求めている。まず自分の犬をどういった視点で見るのか、犬を訓練するときはそれぞれの犬種としての本能をうまく誘導して訓練すること。本能を抑制したらどうなるか、色んな事が書いてありました。
確かにこの本にも、より賢い犬にするためには子犬の時に沢山の刺激を与えれば隔たりのないしっかりとした脳になると書かれています。
この方のテレビ番組を見たことがありますが、犬が最初にシーザー・ミランに出会った時からもう犬の態度が違います。訓練すると違う犬じゃん?って思うくらいに変わります。読んでいてなる程そういうことか!!と思いました。
シーザー・ミランは「溺愛するのは犬のためにならない」というようなことを言ってますね。昔うちにいたポメも母が溺愛しすぎてとてもわがままな犬になってしまいました。(´・ω・`)
僕もいずれ猟犬を飼いたいので、今から彼の番組とか本とかにしっかり目を通していこうと思っています!(`☆ω☆´)
YouTubeとかで、ある猟犬を使ってる猟師さんの動画を見ると、「人間大好き!!!」って子が沢山居るんですよね。やっぱり子犬の頃から沢山色んな人と接して誉められ、叱られて成長したからかなって思います。
獲物を穫って止め刺しする時はご主人に対して「ヴヴゥゥ…」と言って、怒られてますが逆上してガブッとやらない所を見るとしっかりとした関係ができてるんだなと思いました。
猟犬で猟をしたらYouTubeで動画上げて下さい絶対に見ますp(´∇`)q
昔ながらのベテラン猟師さんの中には、獲物さえしっかり追えれば他の人間に対する攻撃性とかはどうでもいい、と思ってるフシのある人もいますね。トラブルの元です。(-_-)
猟犬欲しいですねえ。飼い始めたら言われなくても動画あげますよ!(・∀・)
学生の夏休みに馬牧場で住み込みバイトしてました
馬は乗り物だから皆の言うことを聞くように育てる
犬は作業犬だからマスターの言うことだけを聞くように育てる
子犬のころに擦り寄ってきてもかわいがらないで無視するようにって言われたなあ
場所によってはマスター以外のトコに行ったら蹴っ飛ばすんだとか
デキナイ(´;ω;`)
群れる動物はマスター一人の方がシアワセなんだよ、
馬は移動手段としての調教技術だから・・・って言ってたような
子犬を蹴飛ばすなんて無理っす。(´;ω;`)
でも僕は知人の猟犬の子犬もめっちゃ甘やかしてしまってるので、これはこれでよくないんだろうなぁ。
というのは頭ではわかってるんですけど、やっぱり人なつっこい子犬にきつく当たるなんてできない…。もし犬飼うことになったら、ちゃんとしつけできるかな…。(´・ω・`)
youさん、spinickerさんではないですが失礼します。
馬の調教は人によって様々な方法があります(力を使ったり馬の習性を使ったり…)が、馬も群の動物で犬より上下関係に厳しいです。我が儘放題させるとあっという間に自分が馬より下位だと解釈されてしまいます。なので乗り物だから皆の言うことを聞くように育てるのというより、人間と動物とのそもそもの上下関係を常にはっきりさせる事が重要なんです。でないと制御できませんから。比較的短時間で調教出来でも、力で無理やり従わせる調教をするとその後が非常に厄介になります。乗り物以前に馬も生き物ですから…
すいません、馬を扱う学校に居たので馬牧場さん(youさんではなく)のおっしゃっていた事に違和感ありまして…
白熊さん
「人間と動物とのそもそもの上下関係」ですか、なるほど
2か月×3回程度の経験なので
言葉の表面だけを聞いて理解したつもりになってたんですσ(^_^;)
ちゃんと知識があって&経験した人の言葉はわかりやすいです
youさん、とんでもないです(^^;)
2か月×3回でも凄いですよ!動物を扱う仕事(特に大動物)はかなり肉体労働ですよ!
人間と動物はいくら家族でも同等の関係にはなれません。必ず上下関係があります(人間側が上か下かは家庭により色んなケースがありますが)。
馬の場合産業動物ですから結構シビアで、人間を怪我をさせると最悪お肉になっちゃいますからね。
ただ、私も子犬は蹴っ飛ばせません(*_*)